イラン経済、「最大の圧力」制裁の影響、日本の外交などのメモ

トランプ大統領がイランとの核合意(JCPOA)を離脱して、「最大の圧力」を課していた経済制裁の効果がかなりなものがあると、ちょっと前にbbcが六つのチャートとともに使える記事を配信していた。

www.bbc.com

 

チャートについては上記の記事を参照にしてもらって、その六点の要点は、以下。

1)核兵器合意後の制裁解除ではいままでの反動増で成長率は12.3%。ただしその成長の恩恵はすべて石油や天然ガスなどの産業で、経済全体に恩恵はいきわたっていなかった。イラン市民の不満で最大規模のデモも2018年に起きた。そこにトランプ制裁。米国企業だけでなく、外国企業もイランとの取引を禁止するもので、しかも2019年春には例外措置も停止。これによって石油、金融取引が厳しく制限されたイラン経済の成長率は2018年に4.8%、2019年には16.8%に減速するとIMFは予測している。また失業率は2018年が14.5%で、2019年には同じく16.8%になると予測されている。

2)石油生産は急減していて、特に主要輸入国(中国、インド、日本、韓国、台湾、トルコ、ギリシャ、イタリア)の例外措置を停止した後では、石油生産は日量100万バレルまで減少し、これは数十億ドルの政府収入の減少。また制裁解除時が日量400万バレルぐらいだったのでその時の四分の一。

3)さらに輸出量は、ブルームバーグの報告では、26万バレル程度。ただし石油を闇取引で輸出したり、タンカーの自動識別システムをオフにしたり、瀬どりなどをすることでイランは石油輸出を表の数字以上にはしている可能性大きい。IMFの推定では、イランの外貨準備は860億ドルに減少し、2013年の水準を20%下回る。外貨準備が減ることで、イランがかりに通貨安を嫌ったとしてもそれをコントロールしきれず、インフレが加速する可能性がある、というアメリカ政府高官が指摘。石油輸出収入はイラン政府の会計ベースで約70%減少。

4)イランの対ドルレートは急速に減価していて、それが公定レートと闇レートの乖離を激しくし、庶民は輸入品を買うことに困難を見出している。一例で紙おむつの不足など。

5)消費者物価指数(CPI)現状で、42%。食品および飲料の価格は前年比61%上昇、タバコの価格は 80%上昇。庶民の生活水準の低下。

6)ガソリン価格の高騰。石油(正確にいえば原油)の輸出国であっても精錬設備などが不十分で、ガソリンは輸入国。そのガソリンの価格を300%引き上げると発表して暴動、軍の鎮圧。低所得層向けの補助金政策で政権は乗り切ろうとしているが、今後もこれは制裁措置次第で問題化してくる。

 

なおこの最後のガソリン問題はイランの国内動向を見る上で重要かもしれないので、関連のリンク先を。

イランの原油とガソリン基礎知識

https://www.rim-intelligence.co.jp/contents/info/NewsScope/index_NO010.html

 

ガソリン価格値上げに端を発した国内抗議活動、徐々に沈静化(イラン) | ビジネス短信 - ジェトロ

 

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