ピケティをミスリードするひと

 稲葉振一郎さんが「ミスリードするな」とつぶやいてたので何のことかと思ったら、以下の記事で、『週刊東洋経済』の野村明弘副編集長が「――日本はどちらかと言えば金融政策に頼りがちです。アベノミクスは資産バブルを誘発しています。」といったり、「――日本は政府債務残高がGDP国内総生産)の200%を超え、先進国で最悪の財政状況です。」といったりしたことを指すと思われる。特に前者は、まったく根拠がない。いったい何を指して「バブル」といっているのだろうか?

ピケティが指摘するアベノミクスの弱点http://toyokeizai.net/articles/-/58906

 残念ながら、このブログの過去ログでも明らかだが、ゼロ年代のある時期から『週刊東洋経済』の編集は明白に財務省均衡予算主義や旧日銀的なリフレ否定論に大きく傾斜していると思われる。この副編集長の発言はその姿勢を端的に示すものだろう。

 ピケティが自身のグローバル富裕税のほうが、金融政策についてのインフレ税よりも優越する、とした発言をしているのは、彼の『21世紀の資本』でも展開されている。だが、同時に、このインタビュー以外では、アベノミクスの金融政策によるインフレを目指す政策を支持している。一見すると矛盾する評価であり、その原因は、この野村氏のミスリードにあるのかもしれない。

 ピケティよりもいまの同誌の反リフレ姿勢だけは少なくともよくわかる記事である。

参考:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF19H05_Z11C14A2SHA000/

――日本の現状をどう見ますか。

 ピケティ「財政面で歴史の教訓を言えば、1945年の仏独はGDP比200%の公的債務を抱えていたが、50年には大幅に減った。もちろん債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因だ。安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2〜4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」