小谷野敦&栗原裕一郎『芥川賞について話をしよう1 2010年下期~2013年下期』[Kindle版]

 冒頭は小谷野氏の芥川賞候補作をめぐる自身の選考結果についてのインタビューが収録されている。ここの部分は結構面白い。選考委員が小谷野氏の著作をいかに読解できていないか、を評論的視点と感情的憤りを交差させながら話していて、芥川賞の選考実態について予備知識がないものに一定の展望を与えることができている。僕もそうだったが、「感情的憤り」と読めるところにひきずられてしまいがちだが、まあ、慣れると気にならなくなる。

 メモ書き程度に。
 
 栗原さんの「少女煙草」への偏愛など随所で小谷野氏との好みの差がでていいるところが興味深い。「平穏に見える不穏という芥川賞受賞作の基本線」(小谷野)など、簡潔な洞察も随所にあって読み飽きない。両者が話がかみ合っているわけでもないのだが、なんとなくまったりと思えるのも相性がいいのかな?

 岸田國士の小説への高評価(小谷野)、「麻木久仁子さんも、ご本人に会ったら、ちょっと反則じゃないかというくらいにかわいい」(栗原)などいろいろ細かいところで気になるコメントをメモしながら読み終わった。しかし問題なのは、この両者の対談を読み終えても、芥川賞受賞作、候補作の中で、新たに何か読もうという気にまったくならないことだ。それがいまの現代文学の一面なのかもしれないけど。

 なお、アマゾンレビューが現時点でまったくないのはいかがなものかと思うw。