倉山満『保守の心得』

 倉山さんの保守論。日本はすでに「滅亡」しているという刺激的なテーゼを本書の冒頭にもってきて、ではそのような「滅亡」(何段階かにわかれてる)を逆転・防衛するにはどうすればいいのか? そのキーは「成熟した保守」が広範囲に存在することが必要となってくる、というのが本書の中心的メッセージだ。

 特に本書で強調されているのは「財政」問題、つまり経済政策をどのように考えるかというものがまず大きく、それとともに重視されているのが「外交」問題、そして財政ー外交を束ねるキーとしての憲法問題への視座である。

 それぞれの問題については、いままで倉山さんの多くの論著に展開されているものが最新の情報とともに更新され、また総論的な位置づけに本書はなっている。

外交問題については
倉山満『嘘だらけの日韓近現代史http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20140104#p1
倉山満『嘘だらけの日中近現代史http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20130707#p1
倉山満『嘘だらけの日米近現代史http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120903#p2
そして宮脇淳子さんと行った対談が収録された『環 特集:日−中−米関係を問い直す』は必読のするどい認識を連発しています。
憲法問題では
倉山満『間違いだらけの憲法改正論議http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20131013#p1
財政問題そして第二章の「政党の近代化」の問題にも絡む論点では
倉山満『検証 財務省近現代史http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120504#p1
をそれぞれ読むと倉山さんの「成熟した保守」論がより一層具体的かつ詳細にわかるでしょう。
また『保守の心得』では財務省の消費税増税路線への批判が展開され、これからの財政均衡主義的なものとの闘いを理解する上でも重要でしょう。

保守の心得 (扶桑社新書)

保守の心得 (扶桑社新書)