豊崎由美&栗原裕一郎『石原慎太郎を読んでみた』出版記念トークイベント

 昨日は上記トークイベントにお招きいただきいってきました。顔見知りも多くいてその意味でも楽しいイベントでした。以下、twitterにつぶやいたメモを整理。

 昨日の『石原慎太郎を読んでみた』トークイベントで、石原の思想面の特徴。1)弧絶がテーマ、2)「中心気質」(斎藤環指摘)、3)天皇制や国家に対する相対性&批判的な視座、4)肉体描写が秀逸 などが興味深い論点。特に昨日は最初の1)弧絶が、近作の『再生』や『文学界』最新号掲載の「やや暴力的に」を素材に議論。

 この石原の「弧絶」テーマは、『再生』の読み直しにつながる。トークでは、斉藤美奈子氏の当該書籍についての批判的な書評が紹介され、その斎藤的読解の限界が指摘されてた。いま書店で手にとれる『文学界』の掲載されてる「やや暴力的に」の一編「隔絶」は、3日間、東京沖を漂流する男の弧絶テーマ。

 この『再生』や「隔絶」における“弧絶”テーマは、たとえば映画『潜水服は蝶の夢を見る』のロクトイン症候群を扱った創作、さらにノンフィクションでは川口有美子さんの『逝けない身体』にもつながる問題群だ。一般的な石原慎太郎のイメージやまた実際の生で接する人たちの感想を超える複雑さがある。

 石原慎太郎の『再生』(僕は未読)は、福島智氏の著作などに依拠している(昨日はどのくらいの依拠なのか、が話題になった。またより大きく創作とノンフィクション、盗用の差異といった一般的な問題圏が示唆された。石原が盗用したというわけではない、一般論として。念のため)。

 栗原さん持参の資料をメモ。福島智盲ろう者として生きて―指点字によるコミュニケーションの復活と再生― 』、生井久美子『ゆびさきの宇宙―福島智・盲ろうを生きて 』、光成沢美『指先で紡ぐ愛』。私的に関連メモで、モハメド・オマル・アブディン『わが盲想』、ジナ・ヴェイガン『盲人の歴史』。