川越敏司編著、八木紀一郎他著『経済学に脳と心は必要か?』

 八木紀一郎先生から『経済学の脳と心は必要か?』を頂戴した。グル&ピーセンドルファーの神経経済学無用論に刺激されて行われたシンポジウムの記録。グル&ピーセンドルファーらの批判は、「神経経済学などで心の内面で起きたことがわかっても外部からの観察でわかる経済行動分析で十分」というもの。

 グル&ピーセンドルファーはさらに、個々人の経済行動は利己的な動機から外れることもあるかもしれない。しかしそもそも経済学は集団行動の予測においてはかなり妥当してきた。個々人レベルでの予測がはずれても大したことはない。また集団行動の逸脱については制度や市場デザインを変えればいい。

 神経経済学などは、個々人のレベルでのセラピー、つかり解決手法を要求し、個々人の内面を変える手法であるが、それはムダだ、というのがグル&ピーセンドルファーらの批判の要点のようだ。それに対して『経済学に脳と心は必要か?』は一書をあげて反論している。

 八木先生のものはマックス・ウェーバー自然主義的なものへの見解を再考したもの。かなり高度な論文だ。ウェーバーの心の病と彼の思考の深化も並行して描かれていて興味深い。いずれ別な機会で引用したい論文。

 

経済学に脳と心は必要か?

経済学に脳と心は必要か?