小田嶋隆『もっと地雷を踏む勇気』

 『地雷を踏む勇気』に続く技術評論社からのエッセイ集。小田嶋さんはいまの日本ではめっきり少なくなった辛口の評論を書ける人だと思います。本当にいなくなったんですよね、ただなぜか僕のまわりではまだわりと多いんですけど。類は友をよぶ? 笑。

 頂戴して速攻で拝読しました。多くはすでにネットに掲載されたときに読んだものなんですが、僕のブログの記事を引用していただいた「「大予言」とオウムと「グレート・リセッション」」は、小田嶋さんと僕との共通項が見えて面白いものです。

 昭和の時代の陰謀論は、陰謀論の語り手の機知と教養を示すことであり、それを聞き手の方も(本気に信じているわけではなくその種の機知と教養を)理解していた、という相互の構造は、確かにいまは見られなくなりつつありますが、ここらへんも工夫次第で知的な伝統芸(?)を復活させたいものですね。だってまじめで本当の話ばかりだと正直疲れちゃいますから。そのために芸風としての陰謀論(みんな本当ではないと知りつつ、その陰謀話になにかしら事実を批判するものを見出す知的環境)の再現を、みたいですねえ。

 ただ今の21世紀の陰謀論の多くは、本気で信じよ、とかその類が多くて小田嶋さんが指摘するように「凶悪」的な側面もありますよね。あと陰謀論と政治経済学的手法やゲーム理論の帰結なんかをごっちゃにする人も非常に多くて驚いてしまうのも事実です。これも小田嶋さんのいうように、陰謀論を語り語られるものたちの知的水準の低下に原因があるんでしょうね。

 ノマド・ワーキングの批判的な見直し、また「ナマポ」という差別的な言葉を安易に流すマスコミの報道の在り方への批判など、小田嶋さんの理知的な批評がさえてます。

 まだファンになってない方はぜひお手にとって読んでください。

もっと地雷を踏む勇気 ~わが炎上の日々 (生きる技術! 叢書)

もっと地雷を踏む勇気 ~わが炎上の日々 (生きる技術! 叢書)