『日本思想という病』はシノドスのセミナーをもとにしたものなので実は僕は完成してから初めて全体像を把握した。別に論者五人が協議したわけでもないのに、見事なぐらいに戦前から今日まで続く日本思想の問題点が重複することもなく描かれていて参考になる。中島岳志氏と高田里惠子氏のおふたりの主要著作は何冊か読んでいたのだけれども、片山杜秀氏、植村和秀氏のおふたりの著作は今回が初めてだった。そのためか片山、植村のふたりのパートは特に興味深く読めて日本の右翼思想や丸山真男らの未知な話題にふれたことは嬉しいことだった。
しかし僕の関心領域である日本経済思想(史)と他の日本の思想領域とは近いようでいて互いに未知な部分が多いということに改めて気がついただけでもこの本に参加させてもらった意義があるなあ。結局、ケインズではないけれども今日の社会や経済への発言も多くは戦前からの日本思想の影響や反復であることが確認できる。面白いのでぜひいろんな人に読んでもらえればいいな、と思います。