若田部昌澄さんの『Voice』論説「“GDP創出”の経済学」は産業政策と経済成長の関連を非常に簡潔かつ最新の成果をもとに分析した好論文でした。中でも僕は知らなかった本に、スコット・A・シェインの『創業幻想』という本の内容が紹介されていて、興味を持ちました。以下がその若田部論文の箇所(全文はこちらhttp://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=55&pageStart=0)。
中小企業保護については、たぶんこれからますます声高に主張されるものでしょうね。そのときに考える視座としていいのかもしれません。
: 余計なことをしないという観点からは中小企業支援政策、あるいは創業幻想についても批判を加えておくべきだろう。
各種の成長戦略というと、ほぼ必ずといってよいほど中小企業保護が入ってくる。これは、選挙を気にしなければならない政治家としては合理的である。
しかし成長を促進する経済政策としては、おそらく意味はない。通常、起業家活動、創業活動についてアメリカは先進国と思われている。それについて批判的な目を向けたのがスコット・A・シェイン(ケース・ウェスタン・リザーブ大学)の『創業幻想』(未邦訳)である。
この本が述べるように、新規創業と経済成長には正の相関関係が認められることは事実である。しかしその因果関係は新規企業から経済成長ではなく、むしろ経済成長から新規創業という逆の因果関係が有力だという。これは景気のよいときには創業が容易になり、人々が「ひとつ企業でも起こすか」ということになりやすいことを考えれば理解しやすい。
また、しばしば新規創業の雇用創出能力や技術革新能力が喧伝されるが、シェインは創業される新規企業の大半はほとんど雇用創出能力もなく、革新的でもなく、また事業の継続可能性も低いことを指摘している。
もっともシェインは、ベンチャーキャピタルの成功例を取り上げて、政府はベンチャーキャピタルのように選別的に新規企業支援を行なうことができるし、すべきであるとする。しかし、ベンチャーキャピタルが存在するのならば、政府がその役割を担う必要はないだろう。必要なのは金融市場の発達であり、政府金融ではない。:
このシェインの本は、いま調べてて知ったのですが、山形浩生さんも、起業家=そこらの「自営業」という観点で面白い書評を書いていますね。
http://www.amazon.co.jp/review/R28AXME0D7QXTC/ref=cm_cr_rdp_perm
- 作者: Scott A. Shane
- 出版社/メーカー: Yale University Press
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