山形浩生、若田部昌澄各氏論説『Voice』12月号、さらに鶴見俊輔&上坂冬子


 今月号は面白い。鶴見俊輔上坂冬子憲法談義はふたりのお歳を足すと約160歳なのにこの饒舌と頭の回転の速さはなんというか立派。『思想の科学』の頃からの回想から話が展開していき、最近の日本の外交姿勢には妙にふたりとも同じ立ち位置からの批判(全体主義国家ぽい米国への幻滅かな)をしているのも興味深い。鶴見氏が高橋是清を非常に高く評価しているのには意外な感あり。全体的になぜか鶴見氏の発言の方が吉田茂の包帯姿からなにからなにまで精彩なイメージを放ち、上坂が自分のことを「現実主義者」といつているわりに核爆弾発射いつでもオッケイ論など、なんか浮世離れしているとしか思えない。鶴見が高齢なのは残念。まだあと半世紀くらいは何かを喋り続けるべき人だと思う。


 さて山形さんの論説「給油の流用は当たり前」は、アフガン給油かそれともイラク戦争に流用か自体が意味をなさない問題であるという(だってアフガン作戦に日本の油がつかわれてもその分、イラク戦争にまわすアメリカの給油量が増えることになり、これで十分イラク戦争に日本の給油は貢献しているんじゃまいか、など)、ある意味少し考えれば誰でも思いつくのに、なぜか新聞やテレビではほとんどお目にかかれない「正論」を語ったもの。この論説は高校生や中学生でも読めて理解できると思うので機会がある人は読ませたほうがいいと思う。


 若田部さんのは高橋洋一暗黒卿の『財投改革の経済学』を中心に、道路公団民営化での債務超過問題などの過去の政策論議の事後検証をすべきことを訴えたもの。この論点も山形論説と並び実に重要。


 しかし今月号の『Voice』は面白いなあ。