ハケンのリフレ


 門倉貴史『派遣のリアル』を読む。実はその直前ぐらいに篠原涼子の『ハケンの品格』を前半だけ見て日テレドラマの法則(=田中的にのれない)に見事にあてはまったんだけども本書も出だしはこのドラマの話から。


派遣のリアル-300万人の悲鳴が聞こえる (宝島社新書)

派遣のリアル-300万人の悲鳴が聞こえる (宝島社新書)


 ところで内容をおおざっぱにまとめると、現行の労働者派遣法が生み出したともいえる派遣事業について、

1)本書で説いているように労働者は商品ではない=商品として扱われると著しく経済的立場が不利、という事実がある、


2)「偽装請負」「二重派遣」などの企業の「搾取」が広汎に観察されている、


3)労働者の大多数が正社員を強く望み、派遣社員の地位そのものが生活不安定化に貢献していて社会的に好ましくない、という社会的合意がある、


ということ(派遣労働者の交渉力の非対称性に基づいて、派遣労働者の賃金が理論的には生存可能水準賃金まできり下がるという一種の「市場の失敗」*1)が論点になっていると思います。


 本書の主張がもし正しいと仮定するならば、


(1)現行の派遣事業の禁止(先祖がえり路線)


もしくは千歩譲って?


(2)労働契約法の規制強化(継続派遣の正社員義務化など)


が政策対応としていいのではないかと思うわけですが。


 派遣労働者ひとりひとりのスキルアップとかでの正社員への道は上の「市場の失敗」(存在すると仮定)への対応としては不適切。派遣社員が禁止されると労働コストが増えるのでグローバル化やウィキノミックス化にも適合できない、というのは(主に2)の広汎な存在により)労働者保護の観点からリジェクト。正社員労働市場改革も全然お門違い(なぜなら派遣労働者の交渉力の劣位が「市場の失敗」の原因なので)。


 さて問題は本当に派遣労働市場での「市場の失敗」が存在するかですが、どうでしょうか。

*1:理論的な詳細は辻村江太郎『経済政策論』、『計量経済学』など参照