展望レポート異聞ー0.1%が免罪符となるのか?−


 『日経公社債情報』を斜め読みしていたら、高井宏章さんの署名記事で日本銀行の「経済・物価の展望」(いわゆる展望レポート)の僕からみると正しい解釈がありました。展望レポート自体の問題点はこのブログでも何度も書いているように

1 需給ギャップが現状でプラスであること (問題点:需給ギャップがマイナスという推計もあり一概にいえず。むしろコアCPIでみるべき)
2 将来にどこかでインフレが(急)上昇するリスクがあるとのことだが、その予測は1の論点ともからみ現実性がない
3 金利の正常化が経済の正常化よりも先に来ていて、景気対策として“糊しろ”確保ならば本末転倒
4 リーク問題前後からの市場とのコミュニケーション不全
5 資産市場の正常化、構造改革としての金融政策など総裁記者会見や国会答弁でのさまざまな政策趣旨の披瀝=政策目的の不明瞭化


などですが、この高井論説は、これらのうち1と2にふれた後に、レポートのCPI下方修正(0.5%から0.1%へ)は、目標を自ら下げて利上げをしやすい環境を作ったという手厳しい指摘をしています。確かに、この展望レポートのいままでの使われ方ですと、CPIがゼロ近傍になったとしても「シナリオどおり」という言い方も可能になってくるだけにその“悪用”の懸念は強まります。


 同記事は、上野泰也、佐野一彦(日興シティグループ証券チーフストラデジスト)各氏の発言を引用し、物価下落がとまらない可能性、日銀のロジックの破綻、市場との対話のギクシャク感の深まりなどを指摘しています。

 なお上野氏の発言は以下のものに基づくものだと思います(lukeさんに以前紹介いただいたものから)。ご参考までに。

http://bizplus.nikkei.co.jp/keiki/body.cfm?i=20070314kk000kk