岩田規久男日銀副総裁公開講演会

案内を頂戴したので以下に全文コピペ。ネットだけの知識ではなく、基本的な本を読み、講演やトークライブで生の主張を聴くことを中心にしないと経済問題(だけではないが)は、応用の利く理解に至るのは難しい。ぜひご参集を。


各位
中央大学経済研究所
所 長 石川 利治
公開講演会のお知らせ
標記について、下記の通り公開講演会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。

中央大学経済研究所創立50周年記念 公開講演会(入場無料)
主 催 中央大学経済研究所
日 時 2013年 10月18日(金)(15:00〜16:30)
場 所 中央大学多摩キャンパス 8号館2階 8206号室
多摩モノレール中央大学明星大学駅下車
テーマ 「量的・質的金融緩和」の目的とその達成メカニズム
日本銀行はさる4月4日に、「量的・質的金融緩和」政策を導入するととも
に、消費者物価の前年比上昇率 2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、
これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することにした。
講演では、①なぜ日本銀行は2%の「物価安定の目標」の達成とその維持
を目的としているのか、②「量的・質的金融緩和」政策はどのような経路を
通じてその目的を達成・維持するのか、③実際に日本経済は日銀が想定して
いる経路を歩んでいるか―の3点について説明する。
講演者 岩田 規久男 日本銀行副総裁
<主な著書>
・岩田 規久男『リフレは正しい アベノミクスで復活する日本経済』PHP
研究所 2013 年
・岩田 規久男 編著『昭和恐慌の研究』東洋経済新報社 2004 年
・岩田 規久男・浜田 宏一・原田 泰 編著『リフレが日本経済を復活させる
経済を動かす貨幣の力』中央経済社 2013 年

八田達夫の財政政策の失敗(1997年消費税増税時)の指摘

 八田達夫先生が、岩田規久男先生との共著『日本再生に「痛み」はいらない』(東洋経済新報社)で述べた1997年の消費税増税による景気失速への発言です。当時は先行してさまざまな「減税政策」があったことも思い出しておきましょう。

(1)1990年代の景気は拡張していた。理由は政府の財政が拡張しているから。財政拡張により民間の設備投資も拡大。まだこの回復自体が不十分な中で97年の9兆円の増税が生じた(ちなみに今回2014年は10兆円規模)。

(2)増税の前年96年(いまだと今年だ!)に大蔵省は大々的な財政構造改革キャンペーンをはり、景気は回復したのだから財政を緊縮する必要を喧伝。97年に消費税増税所得税特別減税廃止、健康保険料の引き上げで9兆円の増税を実施。これが景気を大きく屈折。

(3)この消費税増税による景気大幅後退説に対して大蔵省(いまも同じ理屈を財務省は採用)は、97年4〜6月の対前年同期比の消費減少は、直前の駆け込み需要の反動にしかすぎず、7〜9月には回復しているのだから消費税増税の影響はなく、景気後退はアジア経済危機や金融危機のせいだ、と主張する(これを大蔵省見解と名付けよう…田中)。

(4)この「大蔵省見解」は間違いだ、と八田先生。
 
なぜならⅠ.消費税率の引き上げは住宅投資や耐久消費財に大きな影響を与える⇒住宅投資は、97年4=6月も減少しているが、7=9月期はさらに減少幅拡大。耐久消費財も同様。

 Ⅱ.全体の消費はなぜ7-9月期に前年比で伸びたか? その理由は、食料消費が前年の0-157事件による急減と比較しての回復だから。また光熱費も回復しているが、前年が冷夏だったから。


(5) 当時、八田先生は「景気回復が本格化するまで消費税増税を控えるべきだ」と提言したが、レクチャー(説得とかけん制)にきた大蔵省の消費税担当の課長たちは、「先生、景気対策だけは私どもにおまかせください」といったり、「最新の経済学の理論では、ケインズ経済学は死んだということになつております。財政と景気はまったく関係ないのでございます」と政治家たちに“ご説明”している資料で説明している。もちろん八田先生は当時猛烈に反論したが、結果は増税で経済の大不安定化だったことが周知の事実。

 八田先生は以上の97年の財政政策の失敗を次のように総括している。

「大蔵省は、1997年の増税に際して、主税局も主計局も本心から、景気に対する配慮をまったくしていなかったと思いますね。こういうことを国会議員の先生たちに説明していたいちばんの責任者であった当時の主計局調査課長は、出世していまも財務省ののうのうとしています。財務省の辞書には、責任という言葉はないのでしょう」。

 いまもまったく同じ構造だ。「景気の腰折れをふせぐ」政策など真剣には考えてはいない。考えているのは税率を担保とした自らの省益、さらには自身の栄誉とお金(天下り含む)だろう。

日本再生に「痛み」はいらない

日本再生に「痛み」はいらない

“財政危機”は消費税増税をしたい財務省官僚の造語だった、しかも嘘だとしりつつ広めた!

 片岡剛士さんから教えていただいた斎藤貴男氏の以下の動画の3分50秒からの発言。

 要旨は、90年代から2000年まで10年にわたって政府税調会長だった加藤寛氏に対して、財務省(当時の大蔵省)の役人が、それまでの消費税増税をするための理由(直間比率の是正)が国民に理解が難しいので、よりわかりやすい“財政危機”を理由に消費税増税を訴えるとしたもの。この財務省の役人に対して、加藤氏は、「日本には資産がるので財政危機は嘘ではないか」と反論したが、聞き入れずに、その後この“財政危機”が流布して行ったということ。

 しばしば思うが、いまの日本のマスコミや世論の一部の経済“常識”の大半は、このように官僚たちの巧みな誘導によって生まれてきたり、あるいは広く行き渡ったものが多い。「クールジャパン」「ワークライフバランス」「東アジア共同体」「非正統的金融政策」など等……。ひとは知らずこのような官制の造語を利用し、いつの間にか官僚的な思考の罠にはまり、そして官僚的な制度や政策、ましてや官僚個人の責任(責任あるべき立場の人たち)への無関心につながってしまう。恐ろしいことだと思う。