『理論劇画 マルクス資本論』&紙屋高雪『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』

 赤間さんが数ある資本論マンガの中でもわりと勧めているので読んでみた。マルクスが子どもたちのお馬さんになっているところが萌えのツボですか? あるいは、たぶんマルクスファンには感動的なエピソードであるはずの、マルクスのためにエンゲルスが経済援助のために嫌っていた父親の商売に貢献するところ。これに対してマルクスが次のように感謝するところが描かれている。

「僕のための君の献身がなかったら僕はこの途方もない仕事を三巻にまとめることはできなかった……

 感謝に満ちて君を抱きしめる!!」

と髭だらけのマルクスのおじさんが、さあ、胸にとびこんでおいでとばかりに、両腕をひろげて笑みをたたえている姿がマンガになると、これはもうマルクスエンゲルスのBL(ボーイズラブ)じゃね? となってしまうところが、マンガの面白さ、恐ろしさであります。

理論劇画 マルクス資本論

理論劇画 マルクス資本論

 さてこの資本論マンガの構成・解説をした紙屋高雪氏の評論集もついでに読みました。社会意識反映論にたつとかいうそうですが、正直いえば、そんなに気にしなくても普通のマンガ感想集、そしていくつかの時論で構成されてます。『孤独のグルメ』、『きみはペット』、『リアル』などについてのエッセイは面白く読めましたが。何か得ることができたのかといえば時論的な要素も特に切れ味がいいとはいえません(わりとネットで愛されてる『脱貧困の経済学』登場以後ではもはやネットレベルでも失効しつつあるような話だと思います)。同時収録されてるきあ氏のマンガが好きですね。

オタクコミュニスト超絶マンガ評論

オタクコミュニスト超絶マンガ評論

高橋洋一『日本経済「ひとり負け!」』

 日本経済、ひとり負け、まさにその通りだろう。本書の前半は日本経済ひとり負けの根源である、需給ギャップの存在=35兆円規模の存在とそれによるデフレ不況の克服が大前提であることが明記されている。そのためには財政政策と金融政策を組み合わせて行うべき事が解かれていて、相変わらず明解である。このブログでも何度も話題にしているが、日本銀行のガバナンス、これが一種の構造問題、あるいは公務員制度改革の一貫として考えるべきだ、という高橋さんの指摘はいいと思う。デフレバイアスのかかった日本銀行の政策スタンスを正すには、日本銀行法改正が避けて通れない。

 ここらへんの話題はこのブログの読者にとってはおなじみなので、その最新の整理として読まれるといいと思う。さらに本書は基本的に語り下ろしの性格なので、読みやすく高橋さんのリアルな肉声に近い感じだ。特に読んでて面白かったのは、デフレが格差問題の本質である、というところ。累進税率や相続税率の引き上げについてもそれがセーフティネットの充実として戦略的に述べられている。特に高橋さんの特徴は、自分の価値判断をきちんと全面にだしてこの種の所得再分配を語るところだ。例えば税率の変更などは、「好みの問題」(=平等をどう考えるか)としてはっきりと指摘しているのがいい。実際に税制やセーフティネットはただ単に実証的な問題とはいえないからだ。どこで政策を考えるときに「好みの問題」がかかわるか、本書ではそこらへんも随所に書かれてあると思う。こういうところは高橋さんは無意識に書いているようだが、いまの政策議論では忘れがちなところでもある。

 あと厚労省雇用保険の仕組みが、どんぶり勘定になっていてなぜか保険数理を使わない、それがこの雇用保険をもとにしたさまざまなムダとか特殊法人の存続に貢献していると示唆しているところは相変わらず面白い指摘だ。また「成長戦略」というものを歴代の政権は採用してきたが中味がほとんどないから愛用されてきたとか、産業政策の実績のなさと原理的なおかしさの指摘など面白い。2ちゃんねるネタもでてくるなど高橋さんの日常が見えて少し笑えるところもある。こういう語り下ろしスタイルでの高橋さんの自由な口調は読んでて楽しい。

日本経済「ひとり負け!」

日本経済「ひとり負け!」

猪瀬直樹『道路の決着』(文庫版):対論 猪瀬直樹vs田原総一郎

 勧められて読んだのだが、この文庫版の最後の対論は、小泉政権当時の構造改革のひとつのまとめになっていて便利である。特に上下一体方式、超過債務問題、9342キロ問題などが、猪瀬さんの独自の見解で見通しよく批判的整理が行われている。本人も対論の中で率直に認めているように、最初から見通しがよかったわけではなく、5年間で次第に鮮明になってきた部分があるだろう。『道路の権力』や単行本版の『道路の決着』よりも数段にこの対論はわかりやすいものになっている。

道路の決着 (文春文庫)

道路の決着 (文春文庫)

ハマコーのTwitter論と雑談

 『週刊現代』を編集の方から頂戴したのでパラパラみてたら、表紙にあったハマコーの「小沢くんはさびしい」とかいう特集は、これはまるごとただのハマコーTwitter論になっていて結構面白い。ただ中味がある発言はハマコーは別にしてなく、いままでもただ読んでて面白いだけで、そのうち飽きてしまったが

 いまやTwitterにみんな参入している時代だが、正直、このブログのコメント欄でも稲葉振一郎が唸っているように「ムダムダムダ」とジョジョも真っ青な評価が半分は正しいのかもしれない。特にあるときなど数十回2時間ぐらいの間に、同じ人の質問に答えたことがある。質問への答えで終わるのではなく、ネットではしばしば見かけるパターンだが、その答えを無視してどんどん問いを重ねるタイプのやりとりだったので正直疲れたw。その後、その人のtwitterをみたら「専門家だから逃げ方を知っている」と一言ww どんだけ人に質問を答えさせてそれかい! という思いに呆れるの越して笑ったがw 一昨日も非実在青少年規制問題で、??と思うような応対を繰り返したが、そういうのは正直、稲葉さんがいうようにムダではないかと思う。

 見知らぬ人の問いに一回答えて、まだその見知らぬ人から問いがきたり納得できない旨のレスがきたら、無視するか、適当に話をそらすのがベターだろう。いままでの経験値でいうとその質問の主は実は答えを自分で持ってて、それを問いの形で相手に納得させようとしているだけだからだ。相手にする意味に乏しい。

 ただわりと中味のある情報を発信する人も多い。経済系では重宝している面もあるのでまあ、バランスよく使う予定。