もうひとつの日本は描かれたか?−『ジパング』最終回雑感

 ようやく『ジパング』が終了した。この物語はたぶんインドルート攻防戦と石原莞爾毛沢東と会見したことでその物語としてのピークと想像力の多くを使い切ってしまったのではないだろうか? ただ愛読者として再起を期待してそれでも読み続けていた。

 アジアまわりの国際情勢とくに旧植民地関係が「終戦後」にどう描かれるかが、この物語の最重要テーマだと思い注目していたが、ほとんど描かれることなく終わった。インドや中国、そしてソ連との関係がどうなったのか、これでは先のインドルート攻防戦た石原・毛のエピソードが十分に活かされていない。マンガでは受諾したことになっているハルノ―トは、インドネシアと中国本土の権益の全面撤退などしか要求してないので、『ジパング』世界では、台湾、朝鮮半島、あと占領されてないのでカラフトなども領土のままである。もちろん南洋諸島のいくつかとかフィリッピンなどもそのままであろう(立ち読みベースなのでひょっとしたら関係する記述があったかもしれないが)。戦争終了後のもうひとつのあったかもしれない戦後=ジパングが、描かれずに、戦後パートがタイムトラベルの謎解きになってしまいう〜んと思わずうなってしまった。

 これじゃ、谷生の影の前で逃げたそよじゃないか(違

ジパング(1) (モーニング KC)

ジパング(1) (モーニング KC)

『おと な り』

 麻生久美子岡田准一のふたりの日々の生活の音がもたらす愛の物語。これは本当に拾いもの。うまく伏線が張られてて、じらされて(笑)、ここまで主演ふたりの魅力を引き出した監督の力量も見事。なんといっても映画の主要舞台が、僕の今の生活圏(石神井公園)と昔の生活圏(狭山湖畔)なのももちろんいいのだが、やはり長年の麻生久美子ファンとしては、今年、ほんとうに忙しかったんだなあ、とこの映画を見損ねていたことを後悔する。でもDVDでみれたからこそ何度も好きなシーンを細部にわたってチェックできるので面白い。いくつも小物の伏線もありにくい設定。感銘したという点では今年のベストにはいるかも。麻生久美子ファンが僕の周辺にも何人かいたはずだが、最近はブログでも記事がなく淋しいのでこれを機会にみんな再評価すべし。

関連エントリーhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080219#p3
        http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070802#p3

おと・な・り [DVD]

おと・な・り [DVD]

白川日本銀行総裁のデフレリスク否定発言を読んで

 白川総裁のデフレスパイラルはない発言だけど、まあ、日銀流理論に立てば実体経済にあわせてマネーを潤沢に供給しているという認識ががっちり食い込んでるから、そこからは絶対に「物価を起点とした景気下落が理屈からもでてくるはずもないか。

<98〜04年度も緩やかな物価下落が続いたが、景気は02〜07年度にかけ回復を続けた>という白川総裁の発言ののあげ足をとれば、要するに98年を今年とすれば(緩やかどころか急降下だったが)、あと三年はデフレと景気悪化で国民は耐えてろ、と宣告したようなものか。

 しかし本当にバブル崩壊後の93-96年ぐらいの状況を再現してしまうんじゃないか。少なくとも主要メンバーの発言が軒並み当時と似てきてる。まずい。