韓流ドラマが好きだけど何か?

 最近、このブログも新しく見た方もいるかと思いますが、私のプロフィール欄には変わったものがありまして、それは数年前に『冬のソナタ』についての本を書いたということです笑)。2005年に出したのですが、当時はかなりTSTAYAにお世話になりました。

 割引デーの朝一に、韓流オバマさまたちと開店前の戸の前に行列したものです(笑)。彼女たちは開店と同時に籠をつかみ猛然と韓流コーナーに駆け込んだのですが、かっこつけのわたくしはそれができず(く〜なさけな!)、悠然と棚にいくとお目当てのものがいつもなく涙しました。当時は香港版とか本国版のビデオやVOCなんかも盛んに観ましたね。

 いままで一番、書いてて楽しかったのは、その冬ソナの本、『最後の「冬ソナ」論』の特に第一部です。第二部以降は、締め切りがせまったため無理やり経済ネタにふれましたが、この第一部は本格的冬ソナドラマ論になっています。しかも冬ソナだけではなく、日本映画、フランス映画や韓国の他のドラマ、映画など広汎な引用をして、まるで気分は映画評論家ですねw。

 なぜか当時もいまも韓国自体にほとんど関心がないのですが(せいぜい経済データとしての把握だけです)、そもそも韓流ドラマの多くが無国籍を意識しているところがありますね。そのため韓流ドラマをどんなにみてもそれは「ある架空のドラマ空間エックス」を体験している程度でしかないんじゃないでしょうか。とはいえ、ここ1年以上はほとんど観てません。

 その原因は、韓流ドラマのワンパターンに飽きてしまったことです。マッチョタイプの男子=おっさん史観に飽きてきたということでしょう。このワンパターンを打ち破ったのが、日本の小説を原作にもつ『恋愛時代』でした。これが僕には韓流ドラマの終着点に思えてしまい、以後急速に関心がなくなりました。

 映画の方ですが、これは一時期、キム・ギドクの作品に没頭してましたが、観ると疲れるので最近のオダギリ・ジョーのとか観てません。ただ文献や映像資料もかなり集めたのでそのうち何か書けたらいいなあ、と漠然と思ってはいます。あとソン・イェジン嬢は直近で拝見したことがありますがその美貌に完全にやられました(笑)。その最新ドラマがBS2でやってますがそれだけは観たいと思ってます。

 というわけで、できれば、この冬ソナ論。まだ読まれてない人はどうです、おひとつ? 笑


 さて閑話休題(え?)

 われらの梶ピエールさんが、ブログなどで話題をよんだ淡島千景さんの代表作を、本格的な映画評論として結晶させたようです。すばらしい! まもなく近刊の『淡島千景−女優というプリズム』に収録とのこと。どんな内容かは以下のかたのブログにちょっとだけ紹介が掲載されていますが、大変面白そうです! 出版され次第ここでまたご紹介するでしょう。

 http://d.hatena.ne.jp/hana53/20090401/1238549972

中川秀直の眼:なぜ過去最悪の失業率5.5%を目標にするのか?

中川秀直氏の視点は妥当でしょう。不思議ですが、本ブログでもすでに以下と同じ点(過去最悪の失業率を目標とするのは間違いhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090331#p1)を指摘していました。理性的にみれば当たり前なことなのです。就職氷河期や中高年の長期失業が深刻をきわめた数値を目標にするとは呆れてものがいえません。

http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10240020696.html

わたしは「雇用第一」の観点から、失業率が過去最悪の5.5%を目標とすることには疑問もある。4%台でなければならないのではないか。こうした視点から、必要と判断されるならば、さらなる追加的な措置の検討も必要であると考えるが、その控えめな5.5%程度の失業率に抑え込む対策にすら、「大判振る舞いが過ぎる」とはどういうことなのか。

この社説は、新経済対策は規模が大きすぎる、財政再建に着手しろ、と読み取れる。6月頃から議論されるであろう大増税議論において、大増税に賛成するのであろうか。それなら一貫性がある。

しかし、私は、100年に一度の危機において、大増税の議論をすることは間違いであると思っている。世界大恐慌下で金解禁をしたのと同じくらいの間違いであると考える。

 問題は、実は読売新聞の社説でも朝日新聞の社説でもないのです。今回の失業率5.5%が目標みたいな、常軌を逸した「目標」を、内閣府の岩田一政氏が言い出したことが問題です。しかも岩田氏はまだまともな方で、経済財政諮問会議の面々の多くはオール不況の下での増税が本音です。政策当事者と経済のプロがそんな理性的でない発言をしているのですから、新聞記者たちがぶれてしまうのはいたしかたがないでしょう(残念ながらいまの経済関係の新聞記者にプロの経済学者を実証的な見地から乗り越える筆力を求めることは完全ではないものの、ほぼないものねだりです)。ただ経済学以前の理性をはたらかせればわからないものでもないのではないでしょうか?

 麻生政権の追加経済政策については、すでに規模の点でふれましたのでご参照ください。

 大型補正予算でも小出しの罠:http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090407#p1

 ちなみに財政政策も金融政策も、規模を十分に大きくし、そして期間も4〜5年(実際には経済状況次第なので何年という設置自体原理的におかしいのだが)と長期にすえてやらないかぎり、まさに朝日新聞の社説が書いているように、孫や子の世代に負の遺産が継承されるでしょう。

 しかし、この中川氏のブログは、はてなアンテナに登録すると、秘書の人のエントリーがはいってきちゃうのか? 中川氏と秘書の人のエントリー完全にわければいいのに……ということをとりあえず改善というか、どこにアンテナ張ればいいのかとか(違うサービス間でむこうも困るかもしれないけれどw でもはてな側には経済系や教育分野で明らかに他のブログサービス群とは比較にならない質・量を備えているから、こちらを意識しても損はないはず)、中川ブログにメールした。いままでそれでアンテナにいれるのやめてたので。
 

中村宗悦他『日本経済史1600-2000』

 ご恵贈いただく。ありがとうございます。中村さんの担当章は、「松方デフレから第一次世界大戦まで」の第3章です。この時期の概観としては最新のものになるのでありがたい限りです。まだ全部は読んでいません。ただ平成大不況を扱った論説(牛島利明氏担当)は正直、僕には首をかしげる点がありました。特に、平成大不況の原因説で、あれほどの対立を今日まで招いている論陣の一方である日本銀行の政策失敗仮説(総需要不足仮説)を無視しています。驚くべきことです。経済史家や経済思想史・経済学史研究者が時論の幅までみすえて、何かを書くことができるかどうかは、センスと運と努力の三本が必要で、ただ単に通常の研究を地道にすれば時論に架橋できるものないし現代的インプリケーションが加味されたものがかけるわけではないのではないか、と本書を読んで申し訳ないですが、強く思いました。その点が少し残念です。

日本経済史1600‐2000―歴史に読む現代

日本経済史1600‐2000―歴史に読む現代

日銀の国債引き受けの国会議決への助走

 まぶちすみおの「不易塾」日記
 決戦場より

 http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-dd62.html

 民主党の経済対策も、「家計中心」、「無駄遣い排除による財
源確保」、「恒久的」の三点が政府案と違うところだとの訴え
は悪くはないが、肝心なところが欠けている。
財政政策と金融政策の総動員、ポリシーミクスの観点。

政府の国債発行を批判するのは、野党の立場を考えればまぁギ
リギリ了とするとしても、だからと言って一切の財政政策・金
融政策に触れない経済対策ってのは実体経済を触っている人た
ちから見れば何とも「頼りなさげ」に映る。

政府紙幣発行について例の一件で一気に沈静化しているだろう
から、今こそ日銀による国債の大胆購入を進める政策を民主党
は打ち出すべき。岩田規久男学習院大学教授が3月24日付け
日本経済新聞経済教室の欄で非常にわかりやすく解説されてい
る。

 岩田先生の日経教室では、日本銀行国債の直接引き受けへの重要な理論的ステップが書かれていました。それをより具体的な方向で書いたのが、若田部昌澄さんの今月の『Voice』論説でした。そこで若田部さんは以下のように書いている。

日本銀行のとるべき政策的選択肢は三つある。一つは、日銀が長期国債の購入額を増やすことである。二つ目は、日銀の国債引き受けを国会議決によって行うことである。三つ目は前回の本コラム(『Voice』4月号のこと…田中注)で紹介した政府通貨(紙幣)である。どれも経済学的な効果は同じであるが、制度的障害がもっとも少なく、すぐにでもできるのは第一番目である、インフレ上限値の設定も、じつはすぐにできる。現状では日銀はそういう大胆な政策判断を行えないだろう。第一の選択肢を日銀が自ら定めた「限界」(日銀が長期国債保有額を日銀券発行額の限度内にきめるという日銀ルール…田中注)で封じてしまうならば、残る二つのうちのどちらかを選ぶしかない。これからが正念場である。 

 政府紙幣案は高橋氏がおそらく後ろ盾になりアドバイス自民党内ですすめた成果があったが、ご自身の不祥事でこれは現状では政治的に頓挫している(与党内の動きがいまはよく読めない)。

 もちろん与党自民党の選択肢(政府紙幣案)に、民主党がのるインセンティブはもともと低い。かりに馬淵さんが指摘するような、若田部論説の第二の選択肢(日銀の国債引き受けの国会議決)は、衆院過半数を制したときには、その政治的な力を国民にアピールできる点でも申し分のないものだろう*1

 現状では民主党自民党の経済政策の違いは明瞭ではない。せいぜい麻生氏が「エビちゃん」を知っているか知ってないかの違いでしかない。

 ちゃんとした代替案がだされないかぎり、国民にとって果実ある政権交代は望めないだろう。オバマ熱をまねて「グリーン」で競うのをとめはしないが、そのオバマ政権とFRBが行っている政策協調を本格的にやる政権の誕生が待たれる。

 なお、経済財政諮問会議に代わる代替案も構築すべきだ。民主党内でそのような議論が加速化することにも注目したい。あと特定政党の応援はしないので 笑 もちろん自民党やほかの政党、政治家が取り組むならそれは大いにウエルカムである。

*1:なおそのとき早急な経済的引締めを避けるためにー大恐慌の最大の教訓は早すぎる引締めによる停滞の長期化である!−1%以上のインフレ目標の設定と、徹底的な構造改革を約束することであろう

小田切博「キャラクターのランドスケープ」再起動

 あやうく機動と書きそうになったが 笑。もう連載やめたと思ったら(失礼)、いつの間にか再開してました。下の原氏と同様にアンテナに入れておこう。

http://wiredvision.jp/blog/odagiri/

「マンガと海外」http://wiredvision.jp/blog/odagiri/200902/200902271400.htmlでは、

以前、山口昌男鶴見俊輔といったひとたちが50〜70年代くらいに書いたマンガについての文章を読んでいてたいへん驚いたのだが、当時の彼らのエッセイや論考においては明確に「欧米のマンガはすぐれていて、日本のマンガもそれに追いつかなければならない」という主張がとられている。つまり、あきらかに山口や鶴見にとって日本のマンガと海外のそれはひとつながりのものであり、むしろ「海外のマンガ文化をモノサシに日本の水準を測る」ことが意図されていたわけだが、80年代以降日本のマンガ言説においてはかつて「そのような発想があった」という事実自体がきれいに消去されてしまっている。

 僕も小田切さんから山口、鶴見本を紹介してもらって読んだけれども、彼らの知的好奇心の間口の深さに感心した。簡単にいうとおたく的な発想とは一線を画していて、境界をつくらない雑食性という性質をもっている。両者ともそのマンガの選書範囲は地理的にも時間的にも非常にひろい。しかもここが注意点だが両者ともにマンガ以外の世界への関心(特に鶴見は制度的な大学アカデミズム以外の活動)への接続が明らかなことである。小田切さんがこのふたりの業績をいまのマンガ言説が消去しているとするならば、その背景には自らの関心の間口をひろげていく柔軟な精神(つまりマンガ専門バカではないなにかへの情熱)や、制度的な枠組み(大学や学会や政府の音頭に寄生するとか)への安易な傾斜というここ10数年のトレンドと、このふたりの資質が異なるからじゃないだろうか?

直近のエントリーは、「コンテンツはどこから来たのか」http://wiredvision.jp/blog/odagiri/200903/200903241500.html

その後のハードウェアの急速な発達とネットワークの高速化によって、あっという間に携帯でも普通に動画が見られる現在の状況がもたらされた訳だが、96年の時点でマイクロソフトがこうした活動を活発化させていた事実は、たとえば現在のGoogleの「ブック検索」を巡る問題などにつながるものだといえる。

 しかし月一連載とはw

原正人「なぜ私はヨーロッパマンガを愛するようになったか」

 http://wakuteka.jp/archives/2116

 id:boxmanさん経由で知る。『ユーロマンガ』がちょうどはじまった時期に、フランスマンガを読み出したのは個人的にはラッキー。原氏の上記で予告されているエンキ・ビラルの新作『アニマルズ』(Animal’z)なんだけど、僕もいま予約してある(日本に来ているはずだけど連絡がないなあ)。フランスのマンガはやはり絵が綺麗で、ストーリーもなんか奇妙な味わいのものが多い。

 ただこっそりいうけれども上記のエントリーにも書かれているメビウスの作品をちょこちょこ読んでるけど、古典としてはともかく、少し時代遅れな感じ(プラスおっさんの性的妄想爆発)がするような……。大友とか宮崎との影響関係がクローズアップされているけれども、それだけではないわけでしょ?(それだけにいまやなっててもおかしくないけど) そこらへん神格化せずにきちんと論じる人がでてきてほしいもの。