]「「国の借金1100兆円」は本当なのか -話題の〇〇で理解する、わかりやすい経済のはなし」(2018年2月号)田中秀臣&田原彩香in Schoo(スクー)

 毎月一回お届けしているスクーの経済講義です。記憶では五回目を迎えました。おかげさまで半年間の授業延長ということでますます気合が入ります。最新の経済の話題をリアルタイムで、受講生の方々と双方向で語れるのがこの番組の魅力ですね。ぜひ受講登録をして、「受けたい」ボタンを押していただけると幸いです。次回は3月1日。田原彩香さんの誕生日当日でもあります。アイドル的には生誕祭ですw。登録すれば無料で生放送&コメントができます。

 今回は「国の借金1100兆円」は本当なのか? ですが、答えは冒頭にいいましたが、フェイクニュースですw

 アーカイブでも見ることができます。アーカイブの方は有料になると思います(過去のものでは無料でみれるものもあります)

https://schoo.jp/class/4598

岩田規久男日銀副総裁講演&記者会見:リフレ政策への無理解への反論と5年間の総括

岩田先生が日銀副総裁としておそらく最後の記者会見を行いました。それに先行して行われた講演の内容も素晴らしいものでした。

 講演の要旨は、日本銀行の金融政策、特に「イールドカーブコントロール」の有効性に主眼を置いています。また政府があまり過度に財政緊縮スタンスを採用するとインフレ目標達成が困難になること、さらに緊縮政策の主目的であるはずの財政の中長期的な健全化にも赤信号がともることを、日本や欧州の事例の比較も加えて解説しています。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180131a.htm/

さらに記者会見では、「デフレは貨幣現象であると、マネタリーベースを増やせば予想インフレ率が上がるのだ」と岩田先生の発言を解釈した記者に対して、「君はお話にならんね」(意訳)と僕も120%賛同する答えをあげてます。

 当たり前ですが、過度に緊縮に触れた財政政策と金融緩和政策であれば政策の効果は大きくそがれるでしょう。また単純にマネタリーベースを増やすだけではなく、購入する資産の構成も重要でしょう。そしてさらにとりわけ重要なのは日本銀行インフレ目標達成へのコミットメントです。これがわからない人が、相変わらず「リフレ派はマネーをじゃぶじゃぶやればインフレになると思ってる、そしてこんだけマネーじゃぶじゃぶでもインフレ目標五年たっても達成できない。リフレは間違い!」とその理解自体が偏見と昔から続いてる誤解と無知に依存したひどい言説を続けています。いったいいつになったら我々の発言をちゃんと理解するのでしょうか?

岩田先生の発言を以下に引用します。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180201a.pdf
<もう 1 つは、量を増やすだけでなく、例えば、短期国債だけではなく、
長期国債を買わなければならないなど、量をどうやって増やすかということを 申し上げました。あるいはもっと大事なこととして、コミットメントについて 申し上げました。つまり、この政策をやっても実は効かない、と言ってはいけ
ないのです。しっかりと、どのようなメカニズムがあるので、2%を達成する まで日銀がコミットするのだ、だから先送りはしているけれども、2%の達成 目標は降ろしていない、と説明することが大事です。これがコミットメントで
あり、この枠組みの中で長期国債を買ったりすることによって、予想物価上昇 率が上がってくるわけです。単にマネタリーベースを増やすだけで、いつ金利 が上がり、早すぎる出口になるかといったことを人々が思ったのでは、予想物
価上昇率は上がらないのです。コミットメントを伴った量的緩和、あるいは 「イールドカーブ・コントロール」が大事です。そういう意味で、単純にマネ タリーベースを増やせばよいと申し上げたつもりはありません。コミットメン
トが非常に大事です。FRBでは、2%を一時期ほぼ達成しましたが、雇用の 最大化を目指しているうちに、逆に 2%から遠くなりました。FRBのマンデー トは、雇用の最大化と物価の安定という 2 つです。このため、コミットメント
の力が強く、だからこそ皆が信頼するのです。日本も、コミットメントを強く して、2%まで物価を上げるという経験をしないと、なかなか予想物価上昇率 は安定しません。従って、予想物価上昇率が安定するまでは、今の金融政策の
枠組みにコミットすることが大事です。安易に早く出口に出たいなどと言って はいけませんし、2%の目標にまだ遠いにもかかわらず、正常化を急ぎたいと か、非伝統的は嫌だとか、そうした態度は予想物価上昇率が上がらない 1 番の
原因になります。そういう意味で、これだけ詳しく言わないと、実は真意が伝 わらないということです。そこに難しさがあります。>

さて記者会見では岩田先生は2001年の八田達夫先生との共著を推薦図書にしています。この本は僕も座右の書です。当時はあまり売れなかったのですが、今日的意義がありまくりです。

日本再生に「痛み」はいらない

日本再生に「痛み」はいらない

文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」1月30日火曜コメンテーター出演:働き方改革、仮想通貨流出問題など

 メインの解説は、政府の「働き方改革」についてコメントしました。同一賃金同一労働についてですが、なぜ同じ労働が違う賃金をもつのかを、1)流動性が低いこと、2)社会的慣習など の二点にわけて解説しました。

もし労働の流動性が高ければ、各企業間の賃金は市場の調整で同一労働同一賃金になります。そのため同一労働が異なる賃金になるのは、まずこの労働の流動性に注目すべきだと思います。特に流動性の低いことは、さらに1−1)解雇法制など企業側が解雇しにくい状況、1−2)不景気ゆえにブラックな職場でもしがみついてしまう状況 を典型例に説明しました。

その意味で、私見では解雇法制の緩和には僕は慎重姿勢です。ひとつには、日本の雇用慣行として自生的に発生したのが現状の解雇法制的なものだからです。市場の中に埋め込まれた「制度」といえます。また通常の経済学者とは異なり、労働市場では労使の交渉力が非対称的だというのもあります。つまり使う側の方が交渉力が強い。

むしろ昨日、村上尚己さんが書いた論説「非正規社員の待遇を改善する最も確実な方法」にもありますが、同一労働同一賃金もまた非正規雇用の待遇もマクロ的な雇用の回復を一段すすめたほうが、労使ともにウインウインで状況を改善すると思います。この続きは放送をお聴きください。

 他にはコインチェックの仮想通貨流出についてふれました。日本政府は登録制にしていましたが、世界の潮流はむしろ規制促進です。今回の事件を契機にして日本の「寛容」な姿勢が再考されるかもしれません。

 他には
○新潟・佐渡で1万世帯断水
○政府・日銀 円高けん制
○休眠預金 公益活動を支援
○東京一極集中加速
○仮想通貨流出で改善命令

についてふれました。

番組は生放送ではradikoで以下で聴けます
http://radiko.jp/#!/live/QRR
今週の放送は放送後一週間以下からタイムフリーで聴けます。
http://radiko.jp/#!/ts/QRR/20180130060000

論説「共同通信「松吉」署名ツイートと山中教授「印象操作」の根深い病理」by田中秀臣in iRONNA

 毎週連載の論説です。今週は共同通信のあまりな報道について言及しました。この件については誤りを率直に認める方がいいと思います。迷惑をこうむるのは、山中先生やまた読者そのものなのですから。

http://ironna.jp/article/8793

 

ビットコインは「市場の失敗」(by田中秀臣in Schoo)と岩井克人氏の「朝日新聞」インタビュー

 岩井克人先生が朝日新聞のインタビューに答えて、ビットコインはなぜ現状、「貨幣」になれていないのか、また分散型「貨幣」が長期的には滅亡する予測についてもコメントしている。

ビットコイン、貨幣になっても必ず…」 岩井克人さん
 https://www.asahi.com/articles/ASKDT7T61KDTUPQJ00C.html

 大変に面白く刺激的なものである。岩井先生の「貨幣の自己循環論」というものがあって、これは「貨幣は貨幣ゆえに貨幣である」という貨幣の本質を指し示すものである。中央銀行や国家はこの人々の自己循環論的認識を支えるためのひとつの制度=装置にしかすぎない。本質は人々のこの自己循環論法的認識に依存する。

 現代的な議論としては、「貨幣は記憶である」としたコチャラコータの論文がある。コチャラコータ論文については、小島寛之氏が明瞭な解説を下記に掲示した『現代思想』の中の論文で書いている。

 schoo番組の中で、貨幣の自己循環論法の説明と、またビットコインの現状での「市場の失敗」的な説明をしたことがある。

 貨幣の自己循環論法の解説については以下に文字化されている。

ビットコインって、今後どうなるんですか? 経済学者の田中先生に、 “お金”と”経済”の気になるコトぜんぶ聞いてみた
https://pencil.schoo.jp/posts/Jlq1nbR6

 さらにビットコインの「市場の失敗」は、以下の動画が無料公開されているので参照されたい。

ビットコイン中国バブルの経済学入門ー話題の〇〇で理解する、わかりやすい経済のはなし
https://schoo.jp/class/4259

 僕のビットコインの「「市場の失敗」は、まずビットコインの量的な制約、さらに「資産」としての側面が強すぎることで価値の大きな変動が生じてしまい、貨幣としての支払い手段の機能をうまく果たせない、ことに求めている。これは岩井先生の分析と同じである。

 さらにこのビットコインの大きな価値の変動は、市場の構造が特定の嗜好をもった人たち「しかいない」ことでもたらされていると僕は考えている。例えば取引高が何兆、何千億であっても、また取引する人たちが何万、何十万といたとしても、マクロ的には特定の目的=好みを持ったごく数名の人たちからなる市場と同じといえる。例えば極端には全員が支払い手段としてではなく単なる投機的な資産運用としているケースである。貨幣にある支払い手段、価値の保蔵機能よりも投機的な目的で保有し、しかも短期での成果を重視するスタンスを採用する人たち「しかいない」。

 ついでにいえば機関投資家はあまり市場にはいない(保有者の国籍はあまり大きな意味はないが、おまけでいえば日本に偏在しているようだ)。個人投資家が中心のようである。

 このような特定の「方向性」をもつ人たち「だけ」からなり、事実上少数だけが参加しているのと同じ市場は、その人たちの参入・退出によって財の価値が大きく変動しやすくなる。一種の「薄商いの市場」といえる。

 資産としてはこの価値の大きな変動が魅力となってより多くの投機家を招いているのが現状である。そのことがさらにビットコインの「コイン」ではなく、ビットコインの「投機的資産」の面だけを強めていくだろう。ビットコインは現状では、ビット「資産」なのである。

 つまり現状のビットコインは、「投機ゆえに投機が生じる」という投機の自己循環論法が成立している。これはまさにバブルである。

 なおスクーの番組では、仮想通貨の分散型の短命な側面、そして中央銀行などの生み出す仮想通貨がうまく設計されていればそちらの方が分散型よりも強力であること、そして政府はより効率的に金融政策や再分配政策をしやすくなることを説いている。もちろん岩井先生のように監視社会的コストは生じるかもしれない。

現代思想 2017年2月号 特集=ビットコインとブロックチェーンの思想 ―中心なき社会のゆくえ―

現代思想 2017年2月号 特集=ビットコインとブロックチェーンの思想 ―中心なき社会のゆくえ―

 

論説「アベも憎けりゃ“リフレ”も憎し」by田中秀臣in 『月刊WiLL(ウィル)』3月号掲載

 原題は「偏向報道の経済学」ですが、特にリフレ政策をめぐるテレビの取り上げ方、日本の「財政危機」なるものの報道の仕方、村中氏のマドックス賞受賞を「報道しない自由」などを経済学の視点から言及していきました。

 またBPOについてその役割が正しいものとして機能しているのかどうかを簡単に付け加えましたが、この論点については機会があればまた書いてみたいと思います。

 

月刊WiLL (ウィル) 2018年 3月号

月刊WiLL (ウィル) 2018年 3月号

論説「SNH48と愛国ビジネスの経済学」by田中秀臣in『電気と工事』2月号

 第77回目の連載は、中国共産党文化政策と親和的になっているSNH48の活動を中心に、中国におけるアイドル市場について簡単に解説しました。連載はすでに七年目に突入しております。