さようなら!“政策通”という名の官僚メガホン与謝野馨

 与謝野氏が正解を引退されるそうです。もう政治への口出しはご遠慮願いますが、お体には気を付けてせいぜい長生きして、ご自分の「成果」の行く末とその評価を見届けてほしいものです。

さてこのブログでの与謝野氏の「成果」の数々をいままで拾ってきました。いっぱいあるのですがとりあえず主要なものを以下に。

浜田宏一イェール大学教授「経済学の現実を無視する菅内閣と日本銀行が国を滅ぼす」(与謝野氏の政策通の実態があります) 

若田部昌澄「危ない与謝野発言」(『Voice』8月号):常に危ない人でした。

“政策通”与謝野大臣をめぐる現実(このブログの与謝野論総論ですね)

クルーグマンvs与謝野

与謝野大臣の兼務、なんなら首相も兼務したら?

「不況議員」は誰か?

与謝野大臣の発言を考える

朝からすごいもの見た件について(田原、藤井、与謝野三者対談番組という黄金の三人組w)

『月刊現代』から:高橋洋一氏の処遇をめぐる与謝野・麻生の「宮廷クーデター」 (そうそう高橋はずしを演出してました)

与謝野大臣の発言について(日銀のゼロ金利解除も日銀以上に主導。リーマンショックの日本の落ちこみにストレートに寄与した最重要人物)

 日本の経済危機を深刻化させ、そして震災以降の日本経済の将来に消費税増税と過度な財政再建スタンスの種をまいたまま表舞台から去ろうとしているorz

日本を滅ぼすには日本銀行と財務省の超デフレを実現する政策協調が必要

 題名はもちろん皮肉だけど。

 さてちまたでは英国の経済雑誌『エコノミスト』が2050年の世界を予測した本が評判だ。日本目線でいうと、だいたいいま現在、世界経済の10分の一ほどの規模の経済が見る影もなく沈没して、ごく平凡な国に「衰退」することが予測されている。

 ではさらにすすんで、日本銀行財務省がひょっとしたらいままでと同じように、いやさらに協調して日本を衰退以上の状態、すなわち日本を滅ぼすにはどうすればいいのか。『エコノミスト』などを参考に試算してみよう。

 例えば、ゼロパーセント成長が38年間も続くとした場合の一人当たりの名目GDPは63175ドル。38年の長さもありえないとはいえない。だってすでに22年くらい平均して名目成長率ゼロパーセントが続いているのだからそんなに到達不可能な期間でもない。

 ただし人口が減った分(2050年にはだいたい9500万人)いまより一人当たりのGDPはやや上回っている。『エコノミスト』の2050年推計よりちょっと下だけど、ほぼ同じくらい。まあ、それだけ『エコノミスト』さんにも我が国はたかをくくられているわけ。これからもずっと名目成長率はゼロだって。ああ、やんなるね。ちなみに2050年にこの水準だと、ロシアと同じで、米国のだいたい7割程度になってる。

 ところでマイナス2%の名目成長率シナリオだと一人当たりは28471ドルで、いまのだいたい半分くらいに、2050年にはなっている。イェイ。エコノミストの2050年推計だと、そのときのインドネシアやフィリピンとほぼ同じグループ。いま現在の世界で例示すると、世界30位くらいのバーレーンと同じ経済プレゼンスだ(今現在の台湾や韓国よりは上)。

 これでもまだ滅ぶとまではいかないだろう。滅ぶだいたいの水準をおおざっぱに300万円の年収がある人が3万円ぐらいになった経済ではどうか? いまの北朝鮮のだいたい半分以下だと思う。これだとどうも2050年までには間に合わない感じ。デフレ率が二桁の超デフレが必要だ。

 何で日本はなかなか滅びないのだろうか? 1)GDPがすでに大きな水準にあること。これは先行する世代といま頑張ってる人たちに感謝するべきことだ。2)人口減少のスピードがそこそこ速いこと、3)超デフレを回避するための経済的な自動安定化機能があること、などだ。

 だから世界経済危機となにもしない日本銀行の組み合わせでも、やっとマイナス1%を上回るデフレ率が達成できた程度だった。

 「日本を滅ぼす」にはどうすればいいか? 財務省はともかく消費税をどんどんあげていく。いまの社会保障の負担をすべて消費税などでまかなえば、所得の8割は税金で消えるというシナリオもある。稼働可能な若い世代を働かせない(長期失業に塩漬け)、自動安定化機能である失業保険や生活保護を「ナマポ」とか批判して廃止する、日本銀行はひたすらマネタリベースを前年比マイナス10%を超えるくらいで半世紀くらい根気よく継続していく。常に「人口減少でデフレが起きる」とか「(デフレをずっと続けながら)インフレ率0%到達は近い将来」と半世紀ぐらい言い続ける日銀総裁も必要。それくらいの努力をすれば今世紀のどこかで日本は滅ぶだろう。これは極端だけど、税負担も日銀のスタンスもわりとありがちかもしれないね。

おおざっぱな感じなのでミスはお許しあれ。

2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する

2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する

川村純彦『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力』

 門外漢なので本書がどんな評価をうけてるのかわからないが、南シナ海東シナ海含めた海上での中国の軍事行動や偽装漁民を利用した実効支配戦術など生々しい記述が続く。

 恣意的な排他的経済水域の解釈(簡単にいうと本当に軍事力で排他してくる)などを読むと、中国は、周辺諸国と紛争を起こすメリットを抱いている国家である、という印象だ。中国の行動を攻撃一本やりの単線的なもの、交渉することさえ通用しない「敵」という認識が本書のベースにある。

 中国海軍と日本の自衛隊の軍備の比較はとりわけ興味深いものになっている。米軍の核の抑止力の無化を目指す南シナ海の聖域化戦略、「A2AD」(接近阻止、領域拒否)戦略など中国の戦略がより現実的なものになっている、と本書は指摘する。

 説得的に感じたのは、もっと現場の実情に即した、自衛隊の「ポジティブ・リスト」(これだけをすべきリスト)ではなく、「ネガティブ・リスト」(これだけはするなリスト)への法令(交戦規定など)の見直しが急務であるとの指摘だ。