池田幸弘・小室正紀編著『近代日本と経済学 慶應義塾の経済学者たち』

 この前、参加した福田徳三研究会で話題になった著作。慶應義塾福澤諭吉から今日までの多彩な慶應義塾に所属した経済学者たちの貢献を評価した論集。特に「福田徳三の経済思想」(西沢保)、「小泉信三理論経済学の確立」(池田幸弘)、「高橋誠一郎の経済学史研究」(武藤秀太郎)、「三田の計量経済学」(宮内環)が勉強になった。

池田氏の論説は慶應と一橋の経済学の特徴を福田徳三のフィルターを通して評価しつつ、小泉信三の経済学の現代では忘却されている側面に光をあてたもの。この小泉信三の問題圏は、以前、安田洋祐さんとtwitter上で議論したヴェーム・バヴェルク問題と同じものを感じる。「感じる」と書いたのは、ちょっと池田論説でわからない部分があるので断定できない。今後よく考えてみたい。

武藤さんの論説は参考になるのだが、僕も高橋誠一郎の浮世絵とユートピア論との比較を20年近く前に行っているのでその論文を参照してもらいたかった。

宮内氏にも同様のことがいえて、福田徳三の議論と縁付きボックスダイヤグラムとの関連は、同じく20年前の論説で議論しているが参考文献ではない。

ここらへんはググれば容易にでてくるし、もちろん参考文献はわずかな数なので参照されてないことには不満を感じるところではある。ともあれ全体はなかなか参照になるいい論文集である。

近代日本と経済学:慶應義塾の経済学者たち

近代日本と経済学:慶應義塾の経済学者たち