長谷川幸洋「「TPP参加」賛成派からの警告」

 僕もTPP交渉への参加は賛成である。そう書くだけでヒステリックで意味不明の匿名さんのアジテーションが始まる。やれやれである。ちなみに正直いって、TPPみたいな経済効果のたかがしれている問題(でも基本的に自由貿易の方向性を否定するのは国民の経済的利得を損ねるのでばかげている)になぜこんな国論が分裂するのかさっぱりわからない。しかも入口に入る入らないのレベルから。そこには日本の閉塞感、リスクを異様に回避する心性、ネットをみると陰湿ともいえる足の引っ張りの横行などがうかがえる。

 長谷川さんもいま書いたことに表現こそ違え同じ意見だろう。

 さて本稿の主張は経済的には以下につきる。

「成長も競争もいらないという人には「みんな仲良く貧乏になる道を選ぶのか」と答えよう。成長なくして貧乏も格差も環境問題も財政赤字も解決しない。経済成長なくして、どうやって赤字の政府が弱者や敗者に安全網を張れるのか。カネは天から降ってこない。成長こそが税収を増やし、問題解決への力をもたらす。

企業や生産者も同じである。競争なくして経営者は品質向上や経営改善に努力するだろうか。生き残りをかけた戦いを迫られる中で無駄を省き効率を高め、新しいアイディアを生み出す。スポーツマンなら誰でも知っている。競争がなければ苦しいトレーニングをサボる。工夫もしない。記録は伸びない。当たり前だ。

米国の圧力で改革するのは嫌だという人には「なにを、どう改革するかは結局、日本自身である」と答えたい。通商交渉は戦争ではない。プラスと思えば合意し、思わなければ合意しない。それだけだ。政府が合意しても、最終的に条約案を批准するかどうかは国会が決める。つまり日本国民の意思だ。」

 日本の交渉的地位は、長谷川さんの論説を読めば、そんなに悪くない。もちろん自由貿易オッケイは原則的にだ。個々の交渉がかならずしもすべての国に恩恵をもたらすとはかぎらない。そんなのやってみなくちゃわからない。やらないうちから潜在的利益が潜在的損失を上回るものを回避するのは、あんまり賛成できない。

 ちなみにTPPに参加する経済効果よりも、いまの為替レートを名目で20円ほど円安にもっていくだけで比較にならないほど経済はましになることもいっておきたい。

Voice (ボイス) 2012年 01月号 [雑誌]

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