内部留保で一時雇用も、失業保険で対応でも同じではないの?

 年末の討論番組に出てとりあえず切り返しておいた、企業の内部留保を使って企業は社会的責任を果たして自主的に非正規労働者の雇用を維持しろ、という話。

 ちょっ試しに考えてみたんだけれども(モデルが好きな人はクルーグマン流動性の罠モデルでいいと思う)、この種の内部留保を活用した一時的な所得再配分は、どっかに課税してそれで失業保険を充実させて非正規雇用労働者の解雇に対応するのと、ほとんど同じじゃないのかな? 

 もし内部留保の自発的活用(ただし企業が社会的責任果たさないという社会からのプレッシャー前提)と失業保険の充実とが、一時的な所得再配分の点で同じだとしたら、前者の(あまりあてにならない)自主性に期待するよりも、失業保険の充実に走ったほうが望ましいように思える。一時的な直接雇用*1で対応してももちろん同じ。あと解雇された非正規雇用の人たちに現金をばら撒いても同じ*2

 ただ注意すべきは、クルーグマンモデルでも、あるいは似た類似の発想(バーナンキ、スティグリッツら政府通貨やマネータイゼーションを唱える人たちなど)でも、この一時的な所得再配分(自主的でも、政府が介入してでも)には、まったくといっていいほど景気刺激効果がないこと。

 内部留保活用という主張は、その討論番組でも感じたけれども、共産党の穀田氏が嬉しそうに説明していて、まさに企業悪を退治するというイメージに近く世論受けするのかもしれない。でも僕は経済効果や意義が同じならば、失業保険の拡充やら一時的な直接雇用を工夫したほうが社会的摩擦は少ないように思う。でも日本国民の多くはいまだに企業悪=弱者を切り捨てて大金持ちに配当する悪の企業、みたいなイメージがすきなのかもしれない。つまり何がいいたいかというと、どこかに課税して行う一時直接雇用や、失業保険の拡充や、一時的な解雇者への現金バラマキでも同じだとすれば、内部留保活用をあえて優先的にすすめるには、何か経済的理由以外のプラスアルファが主張者の方の事情であるんじゃないの? ということ。

 これって(連合とかが好んでる)ワーキングシェアのようなやはり(不況対応という一時的な)所得再配分でも同じなんですよね。ほとんど景気刺激効果はない。クルーグマンモデルでは現在時点での政策は、実質利子率に影響しないから現在の消費を増やさないから。

 もちろん景気刺激効果ゼロでも一時的な緊急避難にはなる。でもこれを続けても結局は縮小するパイを世代間、正社員・非正規で血みどろで奪い合うろくでもない状況になつて、でもパイの縮小はとまらず というトンデモない事態になるだけだけどね。不況対策をちゃんとしないかぎり意味レスじゃないのかな。

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

*1:例えば地方自治体や国の臨時職員として雇用するとかね

*2:定額給付金の失業割当版。一時的なヘリマネね