日銀の展望レポートメモ(ゼロ金利解除時から今日まで)


 日銀の物価についての「下方修正」の歴史をメモ。


2006年4月 その意味で、先行きの物価上昇率については不確実性があるが、前年比のプラス幅は次第に拡大し、2006年度は0%台半ば、2007年度は1%弱の伸び率となると予想される 注:今回の消費者物価の見通しは現行の2000年基準の指数をベースにしているが、同指数は2006年8月に2005年基準に改定され、同時に前年比計数が2006年1月分に遡って改訂される予定である。その際には、前年比上昇率が若干下方改訂される可能性が高い。→ゼロ金利解除時のシナリオ。なお基準値改訂なのでこのゼロ金利解除時の基本シナリオは以下の10月のものをみたほうがいい。


2006年10月 消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)は、概ね前回の見通しに沿って、プラス基調で推移している。先行き、前年比のプラス幅は次第に拡大し、2006年度は0%台前半、2007年度は0%台半ばの伸び率となると予想される注:今回の消費者物価の見通しは2005年基準の指数を用いている。消費者物価指数は2006年8月に、従来の2000年基準から2005年基準に改定され、同時に前年比計数が2006年1月分に遡って改定された。基準改定により、同指数の伸び率は、2006年1〜7月の平均でみて0.5%ポイント程度低下した。もっとも、このうち、移動電話通信料などで指数計算方法が変更されたことの影響の多くは、当該品目の指数の変化後1年を経過した時点で剥落するため、新旧基準の乖離幅は今後縮小すると考えられる。以上を踏まえると、今回の見通しは、2000年基準で示した前回の見通しと比べ、基調的な判断としては変わりはない


 ここでの基本シナリオは、。先行き、前年比のプラス幅は次第に拡大し、2006年度は0%台前半、2007年度は0%台半ばの伸び率となると予想されるこれが翌年4月には以下のように、「見通し」という前回までの表現が「足もと」と「より長い目(あるいは先行き)」を分離し、さらに「ゼロ近傍」という表現が登場する。


2007年4月 消費者物価指数(除く生鮮食品)は、足もとは、原油価格下落などの影響もあって前回見通し対比幾分下振れている。先行きは、原油価格の動向にもよるが、前年比でみて目先はゼロ%近傍で推移する可能性が高いものの、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大するとみられる。その結果、2007年度はごく小幅のプラス、2008年度は0%台半ばの伸び率となると予想される。


この07年4月段階でゼロ金利解除時の基本シナリオが下方修正されている。

プラス基調 → 足もとゼロ近傍
2007年度は0%台半ばの伸び率 → ごく小幅のプラス


2007年10月 消費者物価指数(除く生鮮食品)は、前回の見通しに概ね沿って、前年比ゼロ%近傍で推移している。規制緩和などを背景に厳しい競争環境にさらされている消費者段階では、原材料高などの価格転嫁は企業間取引ほどには進んでいない。先行きについては、前年比でみて目先はゼロ%近傍で推移する可能性が高いものの、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大するとみられる。その結果、2007年度はゼロ%程度、2008年度はゼロ%台半ばの伸び率となると予想される。


さらにゼロ金利解除後二回目の下方修正

2007年度ごく小幅のプラス → 2007年度はゼロ%程度

以下がゼロ金利解除時のシナリオと現状のシナリオの直接比較

2006年度基本シナリオ
2006年度は0%台前半、2007年度は0%台半ばの伸び率となると予想される

2007年度10月基本シナリオ
その結果、2007年度はゼロ%程度、2008年度はゼロ%台半ばの伸び率となると予想される


 つまり、日銀は「ゼロ近傍」やいくつかの細かい修辞を加えながらもシナリオを下方修正を二度も加えていることになる。しかしこれは日銀の認識では深刻なものではない。「ゼロ近傍」という奇妙な修辞にその苦労が表れているが、日銀の物価安定の理解は「ゼロ%」という表現であるからである。