根元は日銀理論に間違いないのになぜか毎回、リフレ的な深尾先生の論説です(批判してるんではなくある意味すばらしいと思って書いてます)。
日本銀行の21日の利上げに関する評価です。一日遅れですみません。
1 GDPギャップ推計 深尾先生はじめとする「日本経済研究センター」の方々の推計作業の結果の紹介です。GDPギャップは改善しているものの(06年10−12月期で期待インフレ率を加味した場合で0.71%、加味しない場合で1.06%)その値はプラスを若干上回る程度。
2 物価下落リスクも無視できない。コアコアCPIはマイナス0.3%(06年12月、前年同月比)。デフレ再燃の可能性の指摘
3 円高リスク → デフレ要因
3−1 深尾先生たちの推計:03年度の大幅な円安は政府の円売りドル買い介入の効果
3−2 日本の黒字幅→円高要因+米利上げ→日米実質金利差がプラス1.69%からマイナス0.63%へ縮小→円安 =円安基調へ
日銀利上げがこの金利差の縮小+黒字幅 →円高要因へ
3−3 グローバル貯蓄過剰の状況 → ドル安(円高)懸念
3−4 世界外貨準備比率での昇るユーロ、沈むドル、いまは低下する円→景気本格回復だと運用通貨としての円の価値上昇と(しかしこの要因は この論説の短期的なデフレリスク云々とは関係ない、景気安定化以後のシナリオではないでしょうか、とコメント)
4 結論
以上から金利引き下げ余地を確保するための金利引き上げというのは「主客転倒」である。今回の利上げは上記の顕在するリスクの中で、説明責任、市場との対話、信頼性などで疑問が残る、という深尾先生の判断です。
昨日ご紹介したカシャップやフィナンシャルタイムズアジア版、当ブログなどのコメントに比べると穏やかではなりますが(しかし互いに整合的)、きわめて妥当な指摘だと思います。
ご参考:今回の利上げ関連エントリー
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070301#p4
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070226#p1