杉田菜穂『人口論入門』(法律文化社)

 社会保障の専門家であると同時に、著名な俳人でもある杉田菜穂さんの人口論の教科書です。献本していただきました。ありがとうございます。
 
 今現在、杉田さんとは福田徳三研究会でご一緒ですが、本書でも福田徳三が日本の人口政策の理解に与えた影響が書いてあり、教科書の域を離れたマニアックなネタとしても面白そうです。

 僕は実は大学院のときは、人口論を履修していて、河野稠果先生の講義を通年でうけてました。そのとき以来ですね、人口論の教科書にふれるのは。

 ところで福田徳三の人口論の理解は、生存権の文脈で考える必要があり、それはすでに10年以上前に論文にもしたことがあります。杉田さんは優生学的な関心から福田の問題に新たな視点をあてようとしてますね。ふと思い出したのですが、ブレンターノのマルサス人口論とその優生学的解釈について、福田にどんな影響があったのかは重要な論点ですね。そこをまた再読したいと思いました。

人口論入門: 歴史から未来へ

人口論入門: 歴史から未来へ

高橋洋一『「経済」のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?』(実務教育出版)

 リフレ派の間では、「月刊高橋洋一」あるいは、最近はさらに加速して「週刊 高橋洋一」ではないかと言われている多作家となった高橋洋一さんの新作です。

 “経済数量学者”という聞きなれない肩書で、イラスト付きで高橋洋一さんが居酒屋に降臨して、居酒屋談義ならぬ経済学談義を3年目の会社員“経子”さんとお店のマスターを相手に展開していきます。

 イラストが豊富で、また話題は経済学の基本から時事的な問題をクロスさせて軽快にすすんでいますね。特に金融政策の具体的なイメージ、マイナス金利は本当はマイナス金利ではないなどという解説は世の中の誤解を正す上ではとても大切ですね。

 さらに高橋さんが最近特に力をいれているのが、日本の国債、財政をめぐる話題です。日本がまったく財政危機とは遠いことをこれも対話調で解説していきます。

 編集もとても丁寧に作られていて安心して読める一冊です。ただ最後のオチで、経済学というか本書を理解すると本当に人生に金銭的に成功するかどうかは保留しておきたいと思います 笑。

いまさら聞けない! 「経済」のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?

いまさら聞けない! 「経済」のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?