世界金融危機を理解する最新の基本書:岩田規久男『金融危機の経済学』

 今日は緊急出版本の校了校了してから岩田先生のこの新刊を一気読み。ひょっとしたら大学の方にいただいているかもしれませんが、群馬に行くのが待てなくて購入しました。


 やはり岩田先生の年季の入ったわかりやすい経済解説は、当代の書き手の中でも傑出しているでしょう。本書もサブプライムパニックから世界金融危機、そして今後の政策対応まで適確で明晰な解説が展開されています。いま書店にいくとあやしげな危機本が多いのですが、現状では竹森俊平さんの本とこの岩田先生の本をまずは読むことをすすめます。順番からいうと岩田先生の方が初心者にやさしいでしょう。


 さて内容を少しだけ解説します。以下断続的に書いていきます。

金融危機の経済学

金融危機の経済学

日本銀行の「天下り」はどうなっているのか?

 二日ほど前のエントリーで書いた日本銀行の「天下り」の実態がどうなっているのか、という問題。

 http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090207#p4

 さっそく馬淵さんからお返事をいただく。ありがとうございます。

 http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-1599.html

 よっしゃー、やりまっせ!
徹底的に、情報開示求めて、ガンガンやる。
ウーン、ここから、という手があったなぁ...。
これはいいかもしれないなぁ。

 日本銀行という組織が、一種の病理的な現象なのかどうか(あるいはそうでないのか)。いくつかの側面から客観的に検証していく作業が絶対に必要だと思います。金融政策の手段としての独立性はありますが、日本銀行がもちろん民主的統制の下におかれることは疑う余地がないことだと思います。そのための基本的な情報開示はどんどん迫るべきだと考えます。お忙しいところ恐縮ですが、機会があればよろしくお願いいたします。

竹森俊平「サブプライム危機の原因と対策は何か」

 今日発売の『週刊東洋経済』から。読むべきなのは竹森さんとアイケングリーンの論説だけかな。竹森さんの主張は、サブプライム危機の原因を、1)アメリカの過剰消費(所得<消費)がFRBの金融政策でさらに膨張し崩壊したという説。これは長期的に維持可能な消費への回帰をするので金融財政政策は効果薄い(あるいはまたバブルおこすだけ)、2)金融規制の失敗が原因で、過剰なレバレッジが問題の根本なので、金融財政政策で停滞は回避可能、というふたつの見解がある。

 竹森さんは長期的には現在よりもアメリカの消費が低下するのは不可避とみる。そもそも過剰消費になったのは、アメリカの経常収支赤字をファイナンスする資本輸出国の存在がある。これがグローバルインバランスの存在。例えばアジア経済危機以降のアジアの新興国は貯蓄>投資という資本輸出に拍車。

 今回の危機で、このグローバルインバランスの修正が余儀なくされている。つまりアジア経済の内需転換が求められる(なぜならアジア諸国の投資<貯蓄は不況圧力であり、その解消をいままでアメリカの過剰消費が担っていたがこれからはそれが修正されるから)。

 では、アジア経済の内需転換のキーは何か? 竹森さんはそれはアジア各国の金融市場の発展であると説く。新しい投資先の開拓のためにアジアの金融市場が今後、世界経済の発展のキーとなるのである。それに失敗すれば世界経済の停滞は長期化するだろう、というのが竹森さんの読みであろう。同誌にあるバリー・アイケングリーンもその温度差の高低はあるものの基本的に竹森さんと同じ見解である。

 いずれアカロフらの新刊がでた時点で、竹森、シラー、岩田、原田さんたちの諸説を比較検討してみたいなと思っています。

Animal Spirits: How Human Psychology Drives the Economy, and Why It Matters for Global Capitalism

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