尊厳死法案の論点整理(TwitterでのITOKさんのつぶやきメモ)

 Twitterで畏友のITOKさんがつぶやいてた内容がとても参考になるので、以下に整理しておきます。ご本人の了解ないので迷惑だったらこのエントリーなくなるかもしれないので悪しからず。

https://twitter.com/ITOKtw/status/239166403243036672からの連続ツイートより

「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」に対する思考の整理をしておこうかな。

尊厳死」の権利は認められるとする。「尊厳死」の権利は死に対する自己決定権により導かれるものというより治療に対する自己決定権より導かれるものとするのが妥当である。

 尊厳死」の権利と生存権が衝突する場合にどちらが優先されるべきだろうか。生存権が広く認められたものであり死は不可逆であること,「尊厳死」が前述のように治療に対する自己決定権などを考慮すると生存権が優先されるべきものだろう。

 この法案がが「尊厳死」を法制化しようとする法案であることは争いがないことと思う。ではこの法案において生存権が脅かされることはないだろうか。「尊厳死」の自己決定を前提にした場合,誤った決定により死を選択してしまうことが当たるのではないだろうか。

 それを踏まえると「尊厳死」の選択については1.選択がきちんとした情報(生死のみならず今後の状態及びそのケアについても含む)のもとになされているか,2.意思がきちんと反映されかが必要と考えられる。

1.については現段階で確実になされるという制度が整っておらず,この法案においても不確かである。これについて『「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」に対する会長声明』(日本弁護士連合会)http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120404_3.html… に批判がある。また,この法案における定義の不確かさについては山田真「尊厳死法の危険な可能性」(『現代思想』6月号 Vol.40-7)で批判されている。

2.の意思がきちんと反映されるかについては,意思(決定)が固定ではなく揺れ動くものであることが 川口有美子,大野更紗「生きのびるための、女子会」(『現代思想』6月号 Vol.40-7)にある。本法案では意思表示ついては甚だ簡素であり,意思変更がいつでも可能であるかその事が十分に告知されるかが不確かである。上を考慮するとこの法案により生存権が脅かされることがありうる。したがってこの法案に賛成することは出来ない。

うっかりエントリーを消してしまい修復にid:Baatarismさんに助けていただきました。感謝です。

現代思想2012年6月号 特集=尊厳死は誰のものか 終末期医療のリアル

現代思想2012年6月号 特集=尊厳死は誰のものか 終末期医療のリアル