森暢平・香山リカ・水無田気流・小田嶋隆他『雅子さま論争』

 実は来年に書く専門論文の準備に小泉信三の著作を空き時間に眺めている。なので小泉の皇室の「民主化路線」(本書の言葉)とでもいうべきものにも注目していた。もちろん小泉とテニスと皇室という関連に、彼の経済論が微妙な影響を与えていることにも注目していた。

 なので皇室への関心があっただけに、この本を頂いてすぐに読み始め、あっという間に読み終えてしまった。この本の執筆者たちがそんなに「雅子さま」に関心が深いことにまず驚いたが、他方で問題のルーツがどうも本書の冒頭で暗示されていた天皇家の「民主化路線」、(これまた本書の言葉であるが)「皇室フツ―化路線」」にあるように思えるのだが、それを調べるには、やはり小泉信三福沢諭吉ラインへの言及があるのかな、と思ったがそれはなかった。各論者はこの問題に関心のある人をひっぱっていく筆力に富んだ人たちなのだが、もうちょっと歴史的な視野とかを含めると違うものができたのではないか、と思う。しかし皇室に関わる問題はこうも人を熱くさせるのか、とある意味で驚くし、その世相を切り取って行く作業としては本書は興味深いだろう。

雅子さま論争 (新書y)

雅子さま論争 (新書y)