栗原裕一郎『<盗作>の文学史』

 栗原さんからご本頂戴する。どうもありがとうございます。昨日はこの本を通読するための一日だったといえるでしょう。非常な時間と手間をかけた労作と拝見し、またこの本を通読することで近代から現代にいたる日本の文学史を「盗作」という視点から学ぶことができる点もすばらしいと思います。すべての才能の可能性がその処女作に求められるならば、まさに麒麟児現る(福田徳三が小泉信三を評したもとは別の誰かの言葉)といって差し支えないでしょう。

 文学者たちの分業と市場の確立が「盗作」を生み出してしまっている点にも注目しているなど、栗原さんの問題の捉え方は非常に懐が深く、またとり上げられている個々のエピソード(特に僕は倉橋由美子庄司薫立松和平井伏鱒二の事例を面白く読みました)を通じて、文学だけではなく人間の知的な営みってなんなのだろうか? ということを繰り返し考えました。この点を考えると容易な答えがないだけに眠れません 笑。

 例えば僕もこのエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080205#p2経済思想史の問題を考えましたが、この栗原さんの本で提起されている問題と通じるものがあるのではないか、と想っています。

 しかしこれは掛値なしの名著であると思います。文学論議武装したい人間はこの本から入ることをおススメしたいと思います。

〈盗作〉の文学史

〈盗作〉の文学史