島田虎之介『トロイメライ』&『東京命日』&『ラストワルツ』


 伊藤剛さんの評http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20070801を読んで購入。感動した。


 小津安二郎ら著名人の命日に集まる人々の「物語」が、やがて「東京命日」という亡くなったものたちの思い出や幻影や幽霊?に影響される大きな物語に収斂していく。その構成は緻密であり、特に中盤「逗子芯太」という伝説のCF制作者のエピソードから加速度的に物語に引き込まれた。小津の『長屋紳士録』などのエピソードも効果的。家族は霊的なものに通じているから幽霊はでないのか?


 続いて『ラストワルツ』も読む。これはロードムービーなのかなあ。前半の個々のエピソードがすごく面白いが、集団劇の様相を呈してくる後半は散漫で物語として未完成な印象。

(付記) 最近作『トロイメライ』も読む。100年近くの歴史を刻んだ伝説と呪術の対象であるピアノ(小さな音)を再生し、かけられた呪いを解くためにさまざまな小さな物語が語られ、やがて収斂していく。『東京命日』と似た雰囲気で読める(登場人物も一部かぶる)傑作といっていい作品。


トロイメライ

トロイメライ