TBSラジオ、荻上チキのsession22にアンケート回答よせる

 あとで番組のホームページにも掲載されるでしょうけど、一応の回答はこちら。

Q 消費税は来年4月に8%に引き上げるべきだと思いますか?

上げるべきではありません。政治的な妥協をするのであれば、一年先送りで、そのときにまた経済・財政状況をみて判断する、という方向が次善の策です。理由は、出演している片岡さんが説明してくれますが(笑)、日本銀行の政策(これをリフレ・レジームといいます)が不安定化するからです。簡単にいうとデフレ脱却に赤信号がともるからです。政府がたとえ補正予算で景気の腰折れ対抗策をうっても、それ自体は、期待インフレ率をコントロールする日銀のいまの政策とは無縁です。むしろ政府のあいまいな態度(デフレ脱出重視かそうでないのか)は、期待インフレ率にかく乱をもたらすでしょう。

Q また、消費増税をにらんで、10月に経済政策を打ち出すといわれていますが、どんな経済政策をすべきでしょうか?

消費税を上げることに賛成してないので、消費税増税ありきの質問には答えられません。増税ありきの官僚主義をやめましょう。

祝! 連載三年目に突入! 『電気と工事』(オーム社)での経済エッセイ

 すでに連載は三年目に突入しましたw まったくミスマッチ(笑)な専門雑誌で、実験的な経済エッセイを連載しています。『電気と工事』(オーム社)10月号。

 今回のテーマは、「『はだしのゲン』とマンガ規制の経済学」。次回は、壇蜜と90年代のグラビアクィーン嶋村かおりさんとの比較経済論の予定です! 

いままでの連載内容
1 「悪い」ってどういうこと(前編)
2 「悪い」ってどういうこと(後編)
3 トイレの便座の上げ下げとテロリスト 
4 市場ってなんだろうか?
5 政府ってダメなの、イイのどっちなの?
6 なんてったって(?)アイドルの経済学
7 なんでいつまで日本って停滞してんの(前編)
8 なんでいつまで日本って停滞してんの(後編……じゃない)
9 前田敦子からデンコちゃんの経済学
10 いまの日本では、本当の消費税率は20%?
11 ローカルがグローバルになる日ーSKE48の経済学
12 “政府埋蔵金”の経済学
13 橋下大阪維新NMB48の経済学
14 徴兵制を導入すると防衛力がガタ落ち…の経済学
15 超三流主義の経済学
16 『悪の教典』の経済学
17 核武装したらどうなるんだろうかの経済学
18 アベノミクスってなんだろうか
19 アイドルはなぜ恋愛に走り、涙するのだろうか
20 ムダを見てみない振りする経済学
21 “あまちゃん”の経済学
22 アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』と清算主義
23 株価乱高下の経済学
24 日本経済と消費税増税を考える経済学
25 『はだしのゲン』とマンガ規制の経済学

Barefoot Gen vol.1: A Cartoon Story of Hiroshima (Barefoot Gen)

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私がアイドルだった頃

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XX ダブルエックス 美しき獣 [DVD]

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消費税増税は二つのリフレ(リフレvs財務省発リフレ)のレジーム間競争かもしれない

 今朝、twitterで書いたことをまとめる。
 3%消費税を増税して、2%分を“還元”して、実質1%の消費税増税にするという「財務省リフレ」。いつだったかここかブログで書いたけど、1%小刻み増税案は、財務省発の発想だと、(思い出したけど飯田泰之さんあたりが言い出したときにけん制の意味で)書いたことがある。読売ネット記事はその方向か。

 いま書いた1%小刻みor“実質”1%増税案が「財務省発リフレ」ならば、それに対する普通の「リフレ」は、政治的な妥協で1年延期(&その時点で再考)ないし高橋さんのようにリフレーション(デフレ脱却しての低インフレを維持し、名目経済成長率を安定化させて税収改善すれば)“やらんでもいける”という主張。

参考リンク先
高橋洋一
消費税増税せずとも財政再建はできる
http://diamond.jp/articles/-/41574
浅田統一郎
「デフレ脱却こそが国債累積問題の解決策である」
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120503#p1

 要するに、安達誠司さんが以前指摘したように、いま起きてるのは「財務省発リフレ」vs「リフレ」のレジーム間競争としても考えることができる。このレジーム間競争は1930年代の日本でも起きたものと構図は近似している。そのときも“リフレ”は分裂している。ここでも何度も指摘しているが。それは高橋是清のリフレvs湛山&亀吉のリフレだ。実際にこのエントリーでも書いたが、http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20130614#p1 両派は、30年代前半において増税の在り方、金融政策が国債安定化に傾斜していることなどを巡って、主に湛山たちが是清を批判していた。

 この「レジーム間競争」(リフレvs財務省リフレ)が起きている可能性が大きい。

 なお財務省リフレの財務省的な動機(名目成長率上昇による税収増よりも消費税税率アップによる税率コントロールの方が裁量権余地大きいなど)については、この討論における高橋洋一さんの発言にも注意すること。

 もちろん「財務省リフレ」は、“財政再建”でもないただの官僚制の失敗としての非効率な裁量権の拡大に帰結するもので、リフレ(=経済安定化を目的)ではない!。ただの仮構でリフレを利用しているに過ぎないのだ

なおレジーム転換についてはこのエントリーを参照されたい。
政策レジーム転換とピーター・テミン『大恐慌の教訓』http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20111011#p1
トーマス・サージェント(2011年ノーベル経済学賞)と政策レジーム転換http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20111010#p1

また安達さんのレジーム間競争については下記の書籍を参照されたい。

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本

消費税増税をめぐる政治経済学メモ書き

 ここ数日の消費増税をめぐる自分のtwitter上での発言を整理したり、他の注目すべき論者の発言のリンクやそこからの重要文言の引用などを行う。

田中秀臣の発言

 安倍首相が消費税を先送りしたら(本当は取りやめるべきだが)彼の政治指導力は強力に印象づけられるはず。世論の大半は彼を支持するはずだと思うが。「政局化」した人たちがどう動くのかがむしろ国民にわかって、「敵」をつぶすのには首相としても好機だと思うけどね。僕ならそうするけど。逆に消費税増税を決めれば、むしろ安倍首相の指導力は不透明になるかもしれない。常に増税による国民の反発を念頭において行動しなくてはいけなくなり、それは彼の最大の「味方」を失うことにつながる。国民の支持しか首相には頼るものはないのが、前回の首相退陣後の不遇時代でよくわかってるはずだと思うけどね。首相の心のうちはまったく読めないのがこの疑心暗鬼の元で、それは経済政策の在り方からいってもよくはない。ただそれはそれとして、首相がいま消費税増税延期を決断した場合、自民党内はまじにどうなるんだろうか? 本当に「政争」が起きるのか? 
これに対する上念司さんのコメント
政争」どころか、安倍総理が党内を「制圧」してしまうと思います。

なるほど、なと僕は思う。さてここ数日の上念さんは、朝日新聞の以下の記事に注目し、それを徹底的に批判している。

https://twitter.com/smith796000/status/377553572885299200
【大拡散希望!!】「首相が消費税増税を決断」という願望をさも事実であるかのように報道する朝日新聞。動かぬ証拠→ http://ow.ly/oKJ5p http://fb.me/2QyRmBTdz
また最近、増税否定派に転じた読売新聞の社説を紹介している。
https://twitter.com/smith796000/status/377561102730924032
拡散希望】GDP改定値 肝心なのは成長の持続力だ(9月11日付・読売社説) http://ow.ly/22CbWw →「消費税率を3%から5%に上げた際は、景気失速で法人税などの税収が大きく落ち込んだ。財政再建は大切だが、増税が逆効果となるリスクにも警戒しなければ」

この上念さんが紹介している朝日、読売以外に、(曲者で要注意だが)ロイター通信が以下のような記事を配信している。

アングル:首相周辺は消費増税に慎重発言、フリーハンド狙いか | Reuters http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE98807D20130909

また毎日新聞のこの記事も興味深い。

“菅官房長官:浜田、本田氏意見「影響力ある」 消費増税で− 毎日jp(毎日新聞)” http://htn.to/gZTcyR

 さて片岡剛士さんの発言も実に積極的だ。以下の論説は興味深い。
“リフレ・レジームと消費増税 片岡剛士 - SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル) - 朝日新聞社(WEBRONZA)” htn.to/eoywB7

片岡さんの論説の胆は「リフレレジーム」に黒田日銀が4月に転換した意味を解説し、現状の分析に結び付けていることにある。例えば、GDPギャップへの注目は、単に財政政策中心主義(GDPギャップを公共支出などで“埋める”)という発想とは異なるものであることがわかる。

片岡:物価上昇率がマイナスとなっているのはアイルランドと日本のみであり、アイルランドは日本のようにデフレが持続しているわけではない。傾向線を推計すると、確かにGDPギャップの係数は有意であるため、GDPギャップがマイナス(総供給>総需要)となると物価上昇率は低下するという関係はある。ただし、GDPギャップの低下のみでは物価上昇率が低下する原因を明らかにしたことにはならず、まして日本の長期デフレを説明したことにはならないのである。

 白川日銀までは、日本銀行は期待インフレ率のコントロールに失敗していた。それに対して黒田日銀は明確に期待インフレ率のコントロールを重視すると述べている。それがつまりリフレ・レジームの核心である。

片岡:GDPギャップがマイナスであるにもかかわらず、なぜ日本を除く各国でデフレが生じないのかといえば、各国では予想インフレ率をマイルドなプラスの領域で維持するように金融政策を行っており、マイルドなプラスのインフレ率が物価安定に関するアンカー(錨)として機能しているからである
 このリフレ・レジームが消費税増税でゆらぐ可能性はあるか? これについては二点を指摘している。

片岡(1):2%のインフレ目標を安定的に達成するには、名目賃金の持続的拡大が不可欠である。恐らく2014年4月には名目賃金の持続的拡大の動きは弱いだろう。名目賃金の持続的拡大が無いままで消費増税を行えば、消費マインドの悪化と相まって、これまでの総需要拡大の基点となった消費拡大が止まることになる…リフレ・レジームが目的を達成する途中段階で消費増税というショックを与えると、それは総需要の悪化を通じてこれまでの予想インフレ率の上昇を通じた総需要の回復という流れを頓挫させ、リフレ・レジームを崩す可能性が高いのである。
片岡(2):リフレ・レジームの成立にあたっては、安倍首相の功績を無視することはできない。…… 安倍首相の決断により政府が予定通りの消費増税に踏み切れば、政府と日銀が協調して2%のインフレ目標達成に向け緩和姿勢を継続しているという現状が安倍首相自らの手によって覆され、リフレ・レジームは影響を受ける。つまりリフレ・レジームへの信認という観点から考えても、消費増税は重大な影響を及ぼしうる可能性が高いのである。
両方ともに賛成である。ちなみに後者の点については僕は数日前、こんな風につぶやいている。

もう7月から書いてるけど、いまの日銀の緩和スタンスでは1年半後のインフレ目標達成はかなりあやうい。理由1)レジームが揺らいでいる<債券市場の“安定”に注力しすぎている><消費税問題などで政治との協調がちぐはぐ>、2)BEIや景気先行指数の動きが弱い。理由は1)のせい。また(一部の報道によると)日銀総裁が、仮に経済安定を「財政出動でどうにかなる」と思ってる時点で、彼はリフレレジームから大きくはずれてしまう。

 高橋洋一さんの発言も相変わらず鋭い。

まず有識者会議にについては以下でばっさり。それ以外の論説も必読。

消費税増税に7割が賛成 結論見え見えの有識者会議の意味|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/41229

落ち着いた長期金利、懲りずにあおる市場関係者 国債市場では日銀が主役に - ZAKZAK http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130908/dms1309080735008-n1.htm

消費税増税せずとも財政再建はできる ――嘉悦大学教授 高橋洋一|消費税増税は実施それとも先送り|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/41574

【日本の解き方】消費増税前提の青天井予算は財政再建を無視 過去最大に膨らんだ概算要求  - ZAKZAK http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130911/dms1309110728000-n1.htm

 特に最後の論説は財務省増税派の思惑をずばり書いている。

若田部昌澄さんのインタビュー記事も重要

若田部教授が徹底解説 消費税増税を決める前に考えておくべきこと Q&A(上)
http://astand.asahi.com/magazine/wrbusiness/2013091000007.html
(1)名目経済成長率の引き上げ、
(2)歳出の削減努力、
(3)政府資産の整理・売却、
(4)制度改革、
そして、(5)増税が必要です。
 このうち、(1)は財政再建の必要条件だと思います。デフレで名目経済成長率が低迷している状況では、再び経済成長率が下がり、デフレから脱却できず、結果として財政再建が再び遠のく可能性があります。
 アベノミクスの要点は、第一の矢をはじめとして、人々の予想に働きかけるところにあります。現状ではいよいよデフレから抜け出すかもしれないという予想が定着しつつあるところです。それに対して、ここで逆の方向の政策を行うならば、そういう動きに水を差されてしまうという懸念があります。

安達誠司さんのいま起きてることをレジーム間競争とみなす考えも重要だ。
https://twitter.com/seiponbanzai/status/375484274926813184
今日の日銀の景気判断は正しい。が、これでますます増税派の勢いが増す。消費増税の悪影響を相殺する公共投資が労働力のボトルネックで十分機能しないとなると、消費増税で一旦、日本経済アウトということになりそうだが。その前にきっと株とか一瞬ラリーするかも。まあ、来年度がやばいということか。
https://twitter.com/seiponbanzai/status/375485314967416833
それを追加緩和で何とかしようというのが、いわゆる「財務省リフレ」の考え方だが、それでOKなのか。経済の与える影響はともかく(公共事業が民間建設を押し出す?)、財政再建は無理ではないか、と思ってしまう。
https://twitter.com/seiponbanzai/status/375494918208094208
@hidetomitanaka 戦場が「純粋リフレ」VS「財務省リフレ」に移行しつつあるように思います。消費増税賛成のエコノミスト達には全く意味不明だと思いますが。
https://twitter.com/seiponbanzai/status/375507219564875776
@hidetomitanaka この現在の消費増税を巡る「政争」は、私がかつて提唱して全く受けなかった「政策レジーム間競争」だと思ったりもするのだが、「歴史が繰り返す」とすれば、今回はどんな形の終末を迎えるのであろうか?考えただけで怖い。

Baatarismさんのつぶやきも率直で重要。ここでは最近の直言をひとつ。
https://twitter.com/baatarism/status/377724963937337345
国民を愚弄しているとしか言いようがないですね。 / “消費増税低所得者対策、「1人1万円給付」で調整へ - MSN産経ニュースhttp://htn.to/pWBJ79