リフレ派は再分配に関して態度を明確にしていない? まさか!

 そもそもリフレ派というのは日本が長期デフレ(不況)状態から脱して安定的な物価と経済成長を達成することを望んでいるグループのことを指す。この「リフレ派」という名称を僕が愛用している理由は、戦前に石橋湛山がデフレ脱却のためにインフレを実現するというと社会的な誤解を招くので(誤解している方が無理解ゆえに問題なのだが)、「リフレーション」「リフレ」を代りに使おうという主張に日本ではもともと由来する*1

 リフレ自体が一種の再分配を伴うという見方も実は可能である。社会の資源を投資機会のある主体に移したり、または失業者に雇用機会を提供したりする、という意味での再分配である。もうこれでエントリー題名について簡単に説明したので終り、にしてもいい。リフレ派であることは明確な再分配についての一定の態度を明らかにしているといってもいいのである。例えば真逆に、世界が滅ぶにまかせよ、といって投資機会や雇用機会を徹底的に奪う政策だって人は支持しようと思えばできるだろう。僕などはそれに近いものとして清算主義を見ているが 笑。

 さてもう少し庶民的??なレベルにおとして考えると、僕個人のリフレ以外の再分配(社会保障への考え方などを上げておく)への考え方は、例えば別に隠す必要もなく、『不謹慎な経済学』に書いてあるように、なんとかして生存権を経済学的に基礎づけることができないか試行錯誤していることにも明確である。もしかしたらうまくいかないかもしれない。でもそれを思想史的に考えることで、十分に僕自身の社会保障という文脈での再配分に関する価値判断は、別に隠すまでもなく明瞭である。リフレが一種の再分配とみなすことも可能であるということも含めて(ただ下のエントリーで不況脱出の効果がないいうところの再分配政策と混同しないことをお祈りする 笑 さすがにすべて初歩から手取り足取り説明する義務はない)、勘違いさんを除けば僕の著作やこのブログを適当に読んでみればわりとわかることであろう。

 ちなみに僕が社会保障について考えるベースにしているのが山田雄三の著作である。もっともそれ以外の経済思想的立場では、やはり石橋湛山に賛同しいている自分がいたりする。

価値多元時代と経済学

価値多元時代と経済学

 『不謹慎な経済学』での生存権の経済学的基礎の議論に言及したので思い出したが、吉川洋氏がチンパンジー社会の安定を保つために「結果の平等」が存在している、とあるエッセイに書いたことがある。最近、同僚が以下の本を読んでいたので僕も買ってみた。ただそもそも「機会の平等」と「結果の平等」というのはかなり区別し難い概念であることも注意しなくてはいけないが。

*1:某掲示板なのみブログではある人が自分が言い出した、という主張を書いているが、誰が「派」をドッキングさせたのか実はよく知らないが、リフレ+派を用いたのは、湛山やフィッシャーの業績への支持に僕の場合は少なくとも基づく。他の人たちは知らない。

内部留保で一時雇用も、失業保険で対応でも同じではないの?

 年末の討論番組に出てとりあえず切り返しておいた、企業の内部留保を使って企業は社会的責任を果たして自主的に非正規労働者の雇用を維持しろ、という話。

 ちょっ試しに考えてみたんだけれども(モデルが好きな人はクルーグマン流動性の罠モデルでいいと思う)、この種の内部留保を活用した一時的な所得再配分は、どっかに課税してそれで失業保険を充実させて非正規雇用労働者の解雇に対応するのと、ほとんど同じじゃないのかな? 

 もし内部留保の自発的活用(ただし企業が社会的責任果たさないという社会からのプレッシャー前提)と失業保険の充実とが、一時的な所得再配分の点で同じだとしたら、前者の(あまりあてにならない)自主性に期待するよりも、失業保険の充実に走ったほうが望ましいように思える。一時的な直接雇用*1で対応してももちろん同じ。あと解雇された非正規雇用の人たちに現金をばら撒いても同じ*2

 ただ注意すべきは、クルーグマンモデルでも、あるいは似た類似の発想(バーナンキ、スティグリッツら政府通貨やマネータイゼーションを唱える人たちなど)でも、この一時的な所得再配分(自主的でも、政府が介入してでも)には、まったくといっていいほど景気刺激効果がないこと。

 内部留保活用という主張は、その討論番組でも感じたけれども、共産党の穀田氏が嬉しそうに説明していて、まさに企業悪を退治するというイメージに近く世論受けするのかもしれない。でも僕は経済効果や意義が同じならば、失業保険の拡充やら一時的な直接雇用を工夫したほうが社会的摩擦は少ないように思う。でも日本国民の多くはいまだに企業悪=弱者を切り捨てて大金持ちに配当する悪の企業、みたいなイメージがすきなのかもしれない。つまり何がいいたいかというと、どこかに課税して行う一時直接雇用や、失業保険の拡充や、一時的な解雇者への現金バラマキでも同じだとすれば、内部留保活用をあえて優先的にすすめるには、何か経済的理由以外のプラスアルファが主張者の方の事情であるんじゃないの? ということ。

 これって(連合とかが好んでる)ワーキングシェアのようなやはり(不況対応という一時的な)所得再配分でも同じなんですよね。ほとんど景気刺激効果はない。クルーグマンモデルでは現在時点での政策は、実質利子率に影響しないから現在の消費を増やさないから。

 もちろん景気刺激効果ゼロでも一時的な緊急避難にはなる。でもこれを続けても結局は縮小するパイを世代間、正社員・非正規で血みどろで奪い合うろくでもない状況になつて、でもパイの縮小はとまらず というトンデモない事態になるだけだけどね。不況対策をちゃんとしないかぎり意味レスじゃないのかな。

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

*1:例えば地方自治体や国の臨時職員として雇用するとかね

*2:定額給付金の失業割当版。一時的なヘリマネね