行内の動揺鎮めるためだけの突撃ラッパ吹く? 福井総裁の講演(又聞き)への感想

 昨日のエントリーとそのコメント欄のやりとりで、今回のスキャンダルがひょっとしたらゼロ金利解除を早期なものにする、という見方を暗黒大陸さんと意見交換したわけですが、今日のどうみても「予断」ありまくりの総裁の発言は、明確な利上げのメッセージとして市場は受け取ったようです。「予断」をはっきりさせ、株安ショックもおそらく無視して、総裁はたぶん在任中最後の政治的な賭けにでたのでしょう。

 総裁の先手があったので、これは政権側としては、どうでるかです。安部官房長官は本日も先週に引き続いて明確にデフレ継続の現状(これは先週あったのか? たぶん発言にはなかったのではないでしょうか?)とゼロ金利の継続の要求という、どうみても日銀と対立的な見解を出しながらも総裁を擁護しました。もうこうなると政治合戦が傍目にもわかると思います。日銀の信頼性なんか糞食らえですね(失礼)。この公然化した政治ゲームをどう終息させるのか。

簡単にいえば、ゼロ金利を解除すれば日銀の内部組織は維持されると福井氏は判断しているでしょうから、彼のキャリア形成(人事と経営のプロと自認)からいって当然に早期に解除するでしょう。そしてもし株価が下落し、昨日の暗黒大陸さんの予見どおりに二段階的に経済が失速しても、金利の超低位安定で切り抜けるつもりでしょうから、かなり早いペースでのりしろ確保のために利上げを年内、巷間いわれる二回あげるのは確実なのでしょう(もちろん将来の半永久的低金利の折込つきww)。

もし仮にこういった事態が現時点で現政権と後継政権確実な安部氏ら景気持続内閣wが予想するならば、当然、現時点で手をうつでしょうが、あまりあせりはみえません。ということは去年の名目成長率論争から続いている景気失速したら日銀の責任、という政治的な宣伝謀略のまま静観の姿勢なのかもしれません。

というわけでまたも日本経済をいけにえにし、スキャンダルでゆれる行内のみを建直すためだけの突撃ラッパを総裁は吹いたのでしょう。(ーー;)

もちろん経済じゃない、ただのおっさんの感想なのでこれは「ネタ」カテゴリー

 英 The Economist誌での日本の不平等論争の紹介


The rising sun leaves some Japanese in the shade

http://www.economist.com/world/asia/displaystory.cfm?story_id=7066297


景気好調で、完全失業率も低下、新卒採用も増加、しかし他方で不平等論争が過熱している日本の論壇の状況を簡潔に説明。


定番の日本のジニ係数を用いた不平等の悪化はあるか否か論争をまず紹介しています。橘木俊詔先生の日本は不平等が悪化したという説に対する大竹文雄さんの批判(所得格差の大きい高齢世代が増えたことによる人口効果が大)を紹介したあとに、30代以下の若年雇用状況が非正規労働者の拡大や失業によって90年代から05年まで悪化していることを指摘します。


 そして本ブログでも以前ふれましたモリタク森永卓郎)先生と大竹さんのタクシードライバーの雇用状況をめぐる論争を紹介しています。ちなみに大竹さんだけ名前がでてまして、モリタク先生はCritics(匿名さんですね)扱いですね、ちょっと不平等 (^^;)。それはさておき同誌は大竹さんの主張を支持してまして、規制緩和があってドライバーが賃金低下ながらも職をえたことが日本の所得格差を縮小しただろう、と書いてます。なぜならそうしないと彼は失業しただろうからと。同誌は基本的に雇用の流動化が日本経済を停滞から脱したという貢献を認めてますので、これは過去のエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20060531に書いたように私やモリタク先生とは基本的な認識が違うのです。はたからみたらすごくわかりにくいかもしれませんが。簡単にいうと不況の原因判定の差異でして、規制緩和で不況が改善すると考えるか、考えないかの違いともいえます。


 日本の不平等の問題はアメリカなどに比べると深刻なものではない、というのが同誌の判断です。さてもちろん同世代内で所得の開きが大きい高齢世代が増えていくと、彼等の子孫たちに富の不平等(相続財産の不平等)が生じる可能性も指摘しています。橘木先生はさらに若年層でいったんパートやアルバイトになったものが正社員になることが難しい日本の労働市場の問題点を批判しています。この後者の問題については、今月の『Voice』に拙稿を寄せましたが、景気の拡大=リフレ過程の継続があれば正社員としての雇用も増加してくるだろうと予想しています。ご参照いただければ幸いです。

いずれにせよ、同誌らしい簡潔な日本の不平等論争のまとめでして一読の価値はあります。