『マーガレット・サッチャー』

 正直微妙な作品。老人性痴ほう症に直面している理知的な女性の「幻覚」との闘いなのか、それともサッチャーとしての半生を描きたいのか。バランス的には前者に傾斜している印象が強い。後者の描きこみがとても不足して感じた。

 政治ドラマ的なものを期待すると肩透かしをくう作品ではないかと思う。夫や娘との関係はかなり掘り下げているが、メリル・ストリープの事実上のひとり芝居である。これが劇中のサッチャーの生涯を貫いた「孤独」というか「孤高」を描写するのに成功していたかどうかは、いまも書いたがかなり難しいものになった。

 もう少し期待したんだが。

 ただ冒頭に描かれた、現在のロンドンの町中で老サッチャーが家から抜け出し、ミルクを買いにコンビニにいく風景が面白い。いまのロンドンの変貌を一瞬で描いている。