「戦後最大の危機」これからが本番

 昨日のGDPの年率換算での落ち込みが戦後最悪クラスのものであり、それに懸念と危機感を表明する論調が相次いだ(ネットではkmori58さんのここを参照)。この統計数値を考える上で、重要だと思う点は、ふたつ。1)先進国中最悪の数字であること、2)低迷が今後より深く長く続く懸念があること、である。


 1)については、なぜ先進国中、最悪なのか。という説明でまま使われるのが、日本が外需依存であったという説明である。(そもそも外需とはなんぞや、論をとりあえず脇において考えると)このブログでも再三指摘しているように、世界金融危機発生に先立って、日本が独自の要因(日本銀行金利引き上げ)によって、日本経済は「〇六年一〇月頃から、景気は踊り場状態にあったが、〇七年一一月頃、あるいは、遅くとも〇八年三月には景気後退に入った」(岩田規久男『景気ってなんだろう』)と思われる。そこに世界金融危機のショックが重なるという、「二段階の不況」に、日本は直面している。そのため日本は諸外国に比べて景気の減速がより深刻である。


 2)については、まだ景気後退が深刻化し、またそれが長く続く懸念があることである。イワタ式景気予測方法を思い出そう。CIの先行系列の6ヶ月前・対比年率を景気予測で重視している考えである。これは今日でも簡易な予測として便利である。


さて、岩田先生の『景気ってなんだろう』をみてみると、その170ページに過去の景気動向指数(景気の先行きやその大きさなどを示す指数)がグラフ化されている。これをみると過去の景気後退期におけるCIの先行系列の6ヶ月前・対比年率は、バブル崩壊直後、97年のアジア経済危機(&消費税上げなど)、2000年以降のITバブル崩壊直後の同CIの先行系列の6ヶ月前・対比年率の動きをみると、それぞれマイナス15%近くまで大きく変化している。DIの一致指数も掲載されていてそれとCIの先行系列の6ヶ月前・対比年率とのあてはまりがいいこともわかる。


 そして現在の景気後退を昨年10−12月期のCIの先行系列の6ヶ月前・対比年率(参照:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/0206ci.xls)をみてみると、マイナス7.2%、マイナス11%、マイナス11.4%とと、加速度的に景気が悪化する方向にあることがわかり、その深さも飛躍的に悪化していることがわかる。しかしいまだマイナス11%程度である。つまり過去の動きと比較してみると、まだまだ悪化する余地が大きいことがわかる(各個別データをみても過去最悪の数字を出すものが大半であり、マイナス15%ぐらいの変化は今後予測できるだろう…もちろん直観だがそれなりの根拠はあるだろう)。またDIの先行指数をみると、過去の景気後退期に比較すると最悪を示唆する動きでありこれまた改善の兆しはほぼみられない。


 これはただの直観でしかないが、現状における断片的な実体経済のデータ(消費、雇用、マインドなど)をみてみるといずれも悪化の方向にあり改善の兆しはない。それらも勘案するとあと半年ないし1年は景気後退が続くことが「最小悪化」ケースで考えられるのではないか? つまり景気悪化はこれからが本番である*1

景気ってなんだろう (ちくまプリマー新書)

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*1:もうおわかりかと思うが、イワタ景気予測、高橋洋一さんらの景気転換点の解釈によれば今回の景気後退期は戦後最長のものになることも予測されよう