文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」4月26日火曜コメンテーター出演

本日もお聴き頂き感謝します。消費減税を政府が採用すべきこと、一億歩譲って電気、ガス、ガソリン代の減税を行い、20~30兆円規模の補正予算をたてるべきです。林外相の韓国への対応も批判しました。

 

【今日のニュース】
▼政府 物価高に国費6.2兆円
▼石炭火力「30年までに廃止」
▼4回目接種 5ヶ月間隔で
アメリカ2長官 キーウ訪問
▼マスク氏 米ツイッター売却合意

 

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『夕刊フジ』4月15日、“究極の円安対策は「消費減税」と「給付金」”にコメント

ネットにも転載されています。ぜひお読みください!

究極の円安対策は「消費減税」と「給付金」 専門家がズバリ指摘 背景に金融緩和の維持も 電気、ガスの軽減税率 債務や奨学金の減免も効果(1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

論説「ロシア経済制裁の経済学」in『電気と工事』2022年5月号

連載第128回目です。

 

 

以下は上記の草稿です。実際に掲載されたものと違うことがあります。

 

ロシア経済制裁の経済学

 ロシアがウクライナに軍事侵攻し、プーチン大統領が西側社会に対して核兵器の使用をちらつかせたことで、世界が震撼した。日米欧の西側社会と、ロシアや中国などの東側社会という、まるで過去の米ソ対立のような図式が出現した。特に顕著な違いは、両陣営におけるウクライナ戦争に対する世論のとらえ方だろう。西側社会は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は道理をもたず、市民を巻き込んだ人道的危機そのものとして世論はとらえている。対して、ロシアと中国はマスコミへの情報統制の結果だと思われるが、ロシア政府の言い分(ウクライナ東部へのロシア系住民の保護のための特殊軍事作戦)を世論の多くは支持している。昔であれば、政府の情報統制の前にマスコミもましてや個々の民間人はなすすべがなかった。だが、今日ではインターネットでの情報のやり取りや、また軍事的な情勢でも民間衛星データ等によって、我々は「真実」と「フェイク」との違いをある程度は識別することができる。もちろん反対にネットの情報を利用したプロパガンダが流行している事実も、今回のウクライナ戦争は気づかせてくれた。
 西側社会は、ロシアに対してかなり厳しい経済制裁を加えた。そのポイントは、モノよりもカネの動きをしばることだ。なぜそうなったのか。それはロシアと欧州との経済関係を考えれば、ある意味で当然だった。ロシアは世界第三位の産油国であり、欧州連合EU)は25%をロシアからの輸入に依存している。さらに最近の脱炭素化の動きの中で、炭素の排出量が比較的に少ない天然ガスにエネルギー依存が高まっていた。欧州連合はロシアからその46%を輸入している。また自動車の排ガスを浄化する触媒に使われるパラジウムは、ロシアが世界産出の4割を占める。エネルギーや鉱物資源だけではない。ロシアもそしてウクライナも欧州における最大の小麦の生産国である。
 ロシア経済が石油や天然ガスなどのエネルギーの生み出すマネーに依存していることはよく知られている。石油や天然ガスの価格が、世界からの需要増によって上昇すればそれだけ同国は豊かになり、逆に需要の減少はロシア経済をたちまち失速させてきた。そこをみれば、最も有効な経済的打撃は、ロシアからのエネルギー資源の輸入を禁止することだった。もちろんアメリカやイギリスは、ロシアからの石油輸入はたかだか全体の数パーセントだったため、いち早く経済制裁輸入禁止を盛り込んだ。だが、ドイツ、フランスなど欧州連合は事情が違った。そのためにモノよりもまずはカネに経済制裁の主軸がおかれたのだろう。
 カネへの経済制裁は想像以上にロシア経済を痛撃した。カネへの経済制裁の主軸はふたつだった。ひとつは、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの主要銀行の排除だった。これは輸出入の代金決済は、国境をまたがる銀行同士で行わなければならない。例えば、ロシアが西側から機械部品などを輸入するときは、その決済をロシアの銀行を通じて海外の銀行に支払いの通知をしなければいけない。それが利用できなくなるということは、ロシアの貿易に痛打を浴びせることになる。もっとも上記したように、ロシアからの石油や天然ガスなどの輸入には制裁を課すことを欧州連合は望んでいない。SWIFTの制裁は主に米国やイギリスが率先して行った。対してロシアは穀物などの輸出禁輸で対抗したが、やはり原油天然ガスなどの禁輸は打ち出していない。つまりSWIFT制裁はかなり限定的なものであった。
 対して、もうひとつの経済制裁であったロシア中央銀行の外貨準備凍結はかなりのインパクトをロシア経済に与えた。海外との交易の結果、ロシア中央銀行には外貨準備が膨大に積みあがっていた。その金額は約73兆円である。ロシア中央銀行はさまざまな外国通貨(ユーロ、ドル、人民元が中心)や金を保有して、同国の貿易決済や為替レートの安定のために利用していた。特に注目すべきなのは、2014年のロシアによるクリミア侵攻以降、外貨準備が1.4倍になっていることだ。しかもそれまでのドル依存から多数の外貨やまた金保有に傾斜している。これらは米国によるクリミア戦争に対する経済制裁の結果ともみれるが、ロシアが安全保障上の配慮から脱ドル化を目指していたともとれる。
 ただし外貨準備の大半をロシア中央銀行は各国の中央銀行に委託している。これは貿易の決済などでいちいち各国の通貨を物的に移動させる手間を省くためのものだ。日本銀行もロシアの外貨準備を数兆円規模保有している。これらの資産を凍結することが、今回の経済制裁の最大の目玉だった。結果、ロシア中銀の外貨準備の6割が凍結され、またSWIFTと連動して対外決済が事実上困難になる状況が生まれた。
 カネの制裁をもっとも受けたのはもちろんロシアの金融機関だ。預金の引き出しなどで銀行に並ぶ人たちが報道された。もっともそれが全般的な金融危機にまでは至っていない。次に問題視されたのが、ロシアが保有する対外債務がデフォルト(債務不履行)を起こすのではないか、という問題だった。
 ロシアの国債償還の対外支払いは主にドルで行われていた。このドルとルーブルとの交換が今回の経済制裁で事実上不可能になっている。そのためにデフォルトが起きるのではないか、と指摘されてきた。3月中旬でこのドル建てのロシア国債のデフォルトが起きて、それが国際的な金融システムにどの程度の影響が及ぼすのか、例えば過去のリーマンショックと比べてどうか、などと報道されてきた。
 現段階では、このロシア国債のデフォルトは観察されていない。個々の投資家とロシア政府のあいだでの支払い交渉中なのかもしれない。またたとえ、デフォルトが起きても、ロシア経済の世界経済に占める影響力からいってきわめて限定されたもので、日本にも影響は少ないと言われている。ただし国際的な信用がガタ落ちになったルーブルの価値が急落し、対ドルレートでみると40%以上のルーブル安が数日で起きてしまった。まさに激変である。この為替レートを物価水準で計算しなおすと、ロシア経済はこれから年率20%のインフレに直面すると指摘されている。ウクライナ戦争前でもロシアは8%ほどの高いインフレ率だったが、それが一年以内に倍以上の水準になる。ロシアの国民生活にも大きな打撃になるだろう。
 経済的な苦境は、ロシアだけではもちろんない。日本や西側社会にもウクライナ戦争は原油などの価格高騰で特に低所得層を中心に痛撃になりかねない。この点は機会を改めて解説したい。