「経済学史ニュース54号」と山崎怜会員追悼文を読む

最新の経済学史ニュースが届いた。そろそろこれはネット配信だけにすべきではないかとも思う反面で、紙媒体はやはり独特の一覧性などに強みを持ち続けているので、それはそれで捨てがたい感情もちょびっとwある。

 

今回のニュース・レターでは、やはり会員の退会者数と新規入会者数が10倍ほど違うのが気になった。この参入退出スピードのままだと(そうはならないと思うがw)、10年後には学会としての機能の大半を失ってしまうだろう。

 

また追悼文では、山崎怜先生の追悼を柳沢哲哉先生が書かれていた。「山﨑怜」が正しいのだが、「﨑」が環境依存文字なのでここでは山「崎」と表記させていただくことをお断りしたい。

 山崎先生の『アダム・スミス』などの著作を知ってはいたが、特に自分の研究領域の近さを感じたのは、藤原書店から出した『内田義彦の世界』に寄稿された「内田義彦の音楽」を読んだときである。山崎先生は「内田の学問とか思想を語るばあい、音楽を避けて通ることはできない。しかし、私は内田の音楽思想とか音楽観を正面から論じた文章を知らない」と書かれている。

 

だが偶然に同じ書物の中に、僕は「内田義彦の音楽論」という論説を寄稿していた。実は僕自身も内田の音楽論は他にないな、と思いながら寄稿したのである 笑。しかも面白いのは、山崎先生も僕もまったく内容が重なっていない。内田の音楽を題材にしながら、内田の音楽の関心範囲についてまったく異なる題材を対象にしていたのである。山崎先生の論説は、その意味でも極めて参考になった。

 

なお最近では、佐藤岳晶氏が内田義彦シンポジウムで、「音楽と内田義彦」を報告している。佐藤氏はあえて先行する研究(田中、山崎)を参照せずに報告したと語っていたが、同時にその内容はまたもや驚くべきことに、山崎、田中論説いずれとも内容というか、内田が関心をもった具体的な音楽の領域がかぶらないものだった。言いなおせば、それだけ内田義彦の音楽観が豊潤であり、経済学や社会との見方との関連を通してみれば、容易にその全貌がとらえきれないということかもしれない。

 

また柳沢先生が山崎先生の文学への注目にも言及されているのが目をひいた。『河上肇記念会会報』には、全四回(2016年5月~17年5月)にわたるインタビューが掲載されているが、そこでは山崎先生の文学、演劇などへの関心が豊かに語られている。村山籌子の史料発掘とその研究成果を背景にして、籌子の夫である村山知義の活動にも目配りされた非常に面白いインタビューだった。

 

経済学史学会、というか経済学史研究は、昨年の経済学史学会で小峯敦さんが「多面的知識を有する最後の人たち」(by H.Trautwein)という言葉を紹介していたが、山崎先生はまさにこの言葉を体現する研鑽を重ねられた方だと思う。そのことが先の「内田義彦の音楽」、村山籌子研究、もちろんアダム・スミス研究などから十分に、僕のような後学の者にも伝わっていくことだろう。

 

 

トークイベント:新・田中秀臣経済ぼっち語り by田中秀臣&田原彩香in 荻窪ベルベットサン

新装開店の荻窪ベルベットサンで久しぶりのトークイベントでした!

ぼっち語りなのに田原さんもしっかりサポートしていただき、いつも感謝です。

また寺ちゃんやスクー、そしてもう何年もおいでいただいてるお客様が集っていただき、猛烈な台風の直後にもかかわらず、本当に感謝いたします。

またたくさんのプレゼントやイラストや質問、そして拙著もすべてお買い上げいただきありがとうございました!

 

田原さんと。

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トークイベントの最中を観客の方にイラスト頂きました。

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拙著のサイン会、ありがとうございます! 

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生誕祭もかねてだったのでたくさんのプレゼント頂戴しました。恐縮です。

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論説「疑惑の法相よりむしろ危ない文在寅の対日「タマネギ政策」」by田中秀臣in iRONNA

毎週連載の論説です。

今回は報道の経済学の「悪魔理論」を韓国の対日本政策にあてはめて試考してみました。ぜひご一読ください。

ironna.jp

 

文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」9月10日火曜コメンテーター出演:台風直撃の影響、英離脱延期法案可決など

台風が関東地方や伊豆諸島を中心に大きな被害をもたらしています。まだ完全復旧が見通せない状況です。被災された方々が一刻も安心して生活に戻れるように願っております。

本日のニュース解説メニュー
○台風直撃で交通網寸断
○JR計画運休も再開遅れで混乱
○日産・西川社長辞任
○製造業 景況感冷え込む
○韓国法相に文大統領側近任命強行
○英離脱延期法が成立

また来週もお願いいたします!

今週の放送は以下から聴けます。
http://radiko.jp/#!/ts/QRR/20190910060000
また生放送はラジオの他、radikoでも聴けます
http://radiko.jp/#!/live/QRR

 

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田中秀臣の最新経済ニュース2019年9月「消費増税と日本経済の危機」in schoo

毎月のスクーのライブ講義も三年目に突入。田原彩香さんやスタッフのみんなと和気あいあいでやってきました。これからも同じ調子で、たまにビンビン、たまにしゃっくりーな、たまに寿司くいねえ、とかやりながらも真面目に経済問題を解説していきます。

 

今回から前日にtwitterを利用してとりあげてほしい問題のアンケートを実施し、なるべくそれに沿う形で解説することにしました。第一回目は消費税でした。ただ次回10月も消費増税したばかりでやはりそれが話題かもしれません。

 

録画は有料会員ならみれます。無料会員は生放送の視聴とコメントなどができます。

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schoo.jp

論説「「韓国を敵にした」誤解を招く石破茂の豊富な想像力」by田中秀臣in iRONNA

今週の連載原稿です。マスコミでろくな省察もなく流布する「ポスト安倍」には、岸田、小泉、石破とろくな人材がそろっていませんね。みんな緊縮政策しか選択肢がないか、なにも決められずに首相になっただけで満足し、半年くらいはマスコミも持ち上げますが、あとはいつものようにマスコミの餌食になって使いまわされ消費されるだけの人材ばかりです。こういう政治とマスコミのもたれあいには正直、辟易としてますが、それを許す我々国民にも責任はあるのでしょう。いずれにせよ、石破茂氏の政治手法にはいささかなりとも支持はできません。彼を「自民党の良心」というコメントをラジオ放送中にみかけて、思いっきりずっこけましたが、まあ、そういう意見も自由なので、どうでもいいですが、もう少し物事をきちんと考えた方がいいでしょうね。

 

ironna.jp

経済を無理なく理解するにはどうしたら?(経済書ブックガイド2019)

経済問題を最小の時間で、でも基礎学力をつけながら学んでいくにはどうしたらいいのか? 
 1)いいテキスト 2)いい教師(授業、講演などでの出会い)、3)適切な時間配分 4)無理しない
これらのバランスが必要でしょう。ここでは主に1)の「いいテキスト」を紹介していきます。上から下にいくほどレベルアップ。
なんといっても小学生でも読める(でも大人が読んでも面白い)以下の二冊がやはり最も簡単な経済書の地位をいまだにキープしているでしょう。『レモン』の方は経済学の要の市場(しじょう、マーケット)のメカニズムを、『続レモン』は若干レベルアップしててインフレのメカニズムの解説になっています。

 

新装版 レモンをお金にかえる法

新装版 レモンをお金にかえる法

 

 

 

新装版 続・レモンをお金にかえる法

新装版 続・レモンをお金にかえる法

 

 

さてこの二冊を終えて、次は本ではないけど、このビデオをみよう。経済学の最前線の話題がきっちり解説していてしかも面白い。経済学が行動動機(インセンティブ)を扱う学問だということがよくわかる構成になっている。

ヤバい経済学 (字幕版)

ヤバい経済学 (字幕版)

 

さて経済学には理論と実証がある。前者は現実を簡単に説明するためのお話。後者はその理論が本当に現実を説明できるかを確かめるためのものだ。前者はさらにミクロ経済学マクロ経済学にわかれる。ミクロは小さいというギリシャ語からきていて、これは個々人の行動、企業の行動などを扱う。マクロは大きいというギリシャ語からきている。こちらは経済全体の話題。景気や経済成長、物価や失業などを扱う。国際的な話題はミクロにもマクロにもある。為替レート、貿易などの話題だ。実証は、主に統計学やさらにそれを踏まえた計量経済学という学問がある。さらに経済学は多くの日本人には大敵?の数学を駆使している。このブックガイドでも今回は少し経済数学の入門書も紹介したい。

 

まず経済学や経済全体をざっくりと展望するのなら、以下の5冊を手元においておくと便利だ。昔のブックガイドでは、池上さんのNHK時代の本を推薦したものだがw、この五冊それにとって代わる。

 

経済学の難しさは、自然科学とは違って定説がなく、いまだにいくつかの学説の論争状態が続いていることだ。さらに経済学の全貌を把握するには、歴史的手法が便利だ。この種のアプローチが苦手な人は一気にミクロ、マクロ、計量経済学のコーナーにすすんでほしい。

 まずお勧めの二冊は以下。ナイアル・キシテイニーの著作はどれも素晴らしいがこれが決定版。血も涙も理性もある経済学がなぜ生まれたのかその背景も理解できる。

若い読者のための経済学史 (Yale University Press Little Histories)

若い読者のための経済学史 (Yale University Press Little Histories)

 

代替的な経済学が一望でき、さらに世界経済の概観もできる次の一冊もお勧め。

個人的にはこの入門書も大好きで、特に貧しい国と豊かな国の対比がよくわかる。

経済学 (〈一冊でわかる〉シリーズ)

経済学 (〈一冊でわかる〉シリーズ)

 

 ナイアル・キシテイニーの辞書的な使い方もできる二冊。金銭的にゆとりがあるならぜひ手元で眺めるのをお勧めする。

1分間で経済学――経済に強い自分になる200のキーワード

1分間で経済学――経済に強い自分になる200のキーワード

 

 

経済学大図鑑

経済学大図鑑

 

 さてミクロ経済学の入門書としては次の二冊がお手頃な価格でおすすめできる。

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

以下の本はミクロ、マクロ、計量が一体となっているけど、とりあえずミクロだけでも読むと吉。

経済学講義 (ちくま新書1276)

経済学講義 (ちくま新書1276)

 

飯田さんの次の二冊は高校生でも気軽に読める。特にミクロというわけではないけれども経済学につかれてきたら一服的に読もう。時事的な話も豊富で面白い。

NHKラジオビジネス塾 思考をみがく経済学

NHKラジオビジネス塾 思考をみがく経済学

 

 

NHKラジオビジネス塾 日本がわかる経済学

NHKラジオビジネス塾 日本がわかる経済学

 

 本格的なミクロ経済学の入門的な勉強には以下の二冊を進めたい。

スティグリッツ ミクロ経済学(第4版) (スティグリッツ経済学シリーズ)

スティグリッツ ミクロ経済学(第4版) (スティグリッツ経済学シリーズ)

 

そして日本の時事的なテーマにつながる発想を備えた以下の本もお勧め。

ミクロ経済学Expressway

ミクロ経済学Expressway

 

 最近の経済学はゲーム理論を理解しないとまったく先にすすめなくなっている。その意味で以下の本は欠かせない。

ゲーム理論・入門 新版--人間社会の理解のために (有斐閣アルマ)

ゲーム理論・入門 新版--人間社会の理解のために (有斐閣アルマ)

 

 

マクロ経済学については、この本が超お勧めだ。わかりやすさと歯ごたえと時事的な話題お豊富である。ここ二年程、マクロ経済学の入門コースで教材にしているが教えやすい。

マクロ経済学の核心 (光文社新書)

マクロ経済学の核心 (光文社新書)

 

 さらに経済学初心者でもすぐに読めるマクロ経済学の本格的な入門書は、テキストとして利用してきた経験から以下を推薦。歯ごたえとわかりやすさ必要十分。

マンキュー マクロ経済学I入門篇(第4版)

マンキュー マクロ経済学I入門篇(第4版)

 
マンキュー マクロ経済学II 応用篇(第4版)

マンキュー マクロ経済学II 応用篇(第4版)

 

 さて統計、計量経済学だが、先の飯田『経済学講義』にもふれられているが、それ以上にためになるしかも最前線の統計学計量経済学の話にふれている入門的読み物として次の二冊がおすすめ。

 

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

 

 

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

 

最後は経済数学。これについてはこれまた教えてきた経験からいうと次の本がなんといってもいい。この本を読めば上記の経済学の理解もよりすすむ。たぶん時事的な関心で経済の話題を考える人はこの一冊で必要十分でしょう。

経済数学入門 初歩から一歩ずつ

経済数学入門 初歩から一歩ずつ

 

 

もしさらにすすみたいなら以下の定番もお忘れなく。

 

改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める

改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める

 

 最後に現代の経済問題は政策の在り方をめぐって議論されている。特に緊縮主義とその逆の景気刺激的な見解との対立は根深い。ここらへんの論点を後者の立場からみた「反緊縮」5部作をあげたい。

 

 

 

 

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

 

 

 

緊縮策という病:「危険な思想」の歴史

緊縮策という病:「危険な思想」の歴史

 

 

 

黒い匣 (はこ)  密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層

黒い匣 (はこ) 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層

 

 

ゾンビ経済学―死に損ないの5つの経済思想

ゾンビ経済学―死に損ないの5つの経済思想

 

 あと最新の経済書も二冊。経済学の最前線の話題にもつながる。

ナチス 破壊の経済 上

ナチス 破壊の経済 上

 

 

人工知能と経済

人工知能と経済