小熊英二監督『首相官邸前で』

 小熊英二首相官邸前で』を観る。かなり冗長ではあるが、やはりそれなりの理があり、共感できるデモの記録は感動できるものがある。ただし菅直人元首相の責任に一切ふれない方針は批判したい。原発現場の混乱を招いた責任は大きい。それに触れないのはフェアでない。また当時平行して隆盛していた保守系デモとそのなかの原発に対する考え方や反民主の動きを無視することも記録映画としてどうなのか。反原発デモの帰結で、あたかも野田民主党が選挙で敗退したかのようにされてるのも疑問。福島の1.5キロ以内に住んでらした女性の方の演説が心をうった。

 しかし当時の反原発デモは、それなりの理と共感がベースだったが(そうではない側面もたんまりあったのは了解している)、今年の安保法案デモが、いかに「戦争法案」などの嘘っぱちのメッセージを核にして、シールズなど「流行」をメディアなどが積極的に利用したかもわかる。それを考えると日本のデモの未来は暗いかもしれない。

ちなみに平日の午前中なので観客は10数名。ただし外国人(? 間違ってたらすまないが)だと思うが半数に迫る。ちなみに僕の知るかぎり経済学者の多くは、原発高コスト=原発廃止が基本派。等式の左辺はわりと堅牢。おそらく反原発を支持する言論人が無視してること。邪推すれば、経済学者はなるべく新自由主義とか効率性重視とかで、「敵」だった方がわかりやすい?