松原岩五郎『最暗黒の東京』(講談社学術文庫版)

 松原岩五郎『最暗黒の東京』が、講談社学術文庫から再刊されていた。日本の貧困ルポものの先駆。横山源之助の『日本の下層社会』に隠れてしまいがちだが、いろいろな意味で興味深い。1893年明治26年)の発刊なので、経済学者の河上肇が『貧乏物語』を新聞に連載した大正5年よりも早いし、河上が福田徳三と都市の労働者の健康問題と貧困について議論した明治末年よりも早い。ここらへんの東京の貧民窟は江戸時代(あるいはさらにもっと古く)からの関連でとらえる必要があるんだろうけど、それと河上が問題視した都市の貧困との「思想的」関連を少し考えてみたい。

最暗黒の東京 (講談社学術文庫)

最暗黒の東京 (講談社学術文庫)