大田俊寛『宗教学』

 宗教学についての総論に加えて、この分野の重要な基本書30冊の内容を、時には最新の文献情報を付加しながら紹介したすぐれた展望。

 特に「宗教」と「呪術」との関係、その各々が時代の変遷でどのような形をとっていったかを書いた「はじめに」は必読である。またフレイザーの『金枝篇』とデュルケムの『宗教生活の原初形態』のところも「宗教」と「呪術」の関係を共同体の流れでみるか、共同体/共同体外 でみるかの視点できわめて示唆に富むまとめである。さらにオウム真理教のテロをどうとらえるのかという今の日本の切実な問題や靖国神社の「みたま祭り」に対する見解など刺激的だ。

 ブックガイドの形式だけど宗教学の基本書として十分に使える。僕は大変に便利だった。