八木紀一郎「20世紀のマルクス学の苦難と河上肇」in『河上肇記念會会報』107号

 『河上肇記念會会報』の最新号を頂戴する。ありがとうございます。今回は八木紀一郎先生の講演が冒頭に収録されていて、20世紀における主にソ連とドイツ(東ドイツ)での「マルクス学」の進展、とくにスターリン体制での政治との関係に焦点がおかれて興味深いものだった。福田徳三の改造版「マルクスエンゲルス全集」と頓挫してしまった(河上肇もかかわった)連盟版とのエピソードと、それと最後のリヒアルト・ゾルゲについてのコメント「ゾルゲやワイルたちの流れにマルクス学のもっていた危なさ、政治と学術の緊張があったのではないか、というのが20世紀のマルクス学を追いかけた私の感想です」というものに興味をもった。ゾルゲについては十分に講演では展開されてはいないが。それとこれも講演でちらりとふれているだけだが、「1928年に大学を去り、政治活動に参加し、1932年に共産党に入党し1933年1月に逮捕されました。この過程は河上肇研究として最も深さの必要な時期であり、河上肇研究として最も深さの必要な時期であり、河上肇自身の苦難と変化は日本思想史の中で重要な到達点であったと私は思います」とあるところも興味をもった。特に僕自身にひきつければ、内田義彦研究をした過程で、『第二貧乏物語』や河上の“清算主義”的立場の「深さ」をみてみたいと思い、いまも30年前後の全集を脇においてちらちら見ているからだ。ゾルゲ問題も別に考えたいテーマ。

河上肇記念會 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/m-ymmt/kawakami.html

第二貧乏物語

第二貧乏物語