橘川武郎『日本のエネルギー問題』

 日本のエネルギー政策をどのような方向性で考えていくか。この求められているわりには客観的な議論に乏しい話題について、著者は「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を目的にして、現実性・総合性・国際性・地域性の四つの視点から詳細な検討を行っている。著者は長期的には原発利用の比率を逓減させ、そのかわりに再生エネルギーの活用や原発の安全性の追求などを積極的に追求していくとする。長期的に原発を「たたむ」という主張の背景には、バックエンド問題の解決のむずかしさがある。また同時に即時全廃ではないのは、そのような議論が無視しているエネルギーの安定的な供給を確保するためでもある。

 本書では再生可能エネルギー天然ガス、石炭の高度利用などそれぞれの分野について詳細な議論が展開されていて参考になる。また東京など都市部での災害対策としてのLPガスの活用問題などは、いま現在行われている都知事選のひとつの論点、あるいは知事選を見ていく上でも参考になる視座だろう。