勝間和代『専門家はウソをつく』

 日常には知らないこと、そして同時に知らないとちょっと困ることが多く存在している。例えば、経済、金融、健康、教育、スポーツ、ダイエットなど等。それらの分野にはそれぞれの専門家が無数に存在している。本書はそのような専門家たちとどうつきあっていくか、どのようにその発言を利用していくかを、勝間さん自身の経験も踏まえながら書かれた、あいかわらずわかりやすい本だ。

 専門家にだまされない完璧な方法は残念ながらない。なので本書でも少しの失敗は当たり前であり、そのリスクをおそれずに、試行錯誤で学習していくポイントが列挙されている。

 やはり僕が気になるのは経済、金融関係だが、この話題については、リフレを主張したときに、「肩書き」批判をされた勝間さんの経験なども交えて、株価動向の「予測」のインチキ性などを遠慮容赦なく指摘している。ここらへんの再帰性の議論や、ブラックスワン的な議論は、僕との共著『やる気のでる経済学』でも十分に展開されているものだ。

 経済については、なかなか市場の声を聴くのも難しい側面はある。なぜなら経済学者の啓蒙レベルの市場が本当にうまく機能しているのか問題が多いだろう。ネットの声を聴くのもバイアスがあるだろう。なかなか解答がみつからないが、それでも「専門家を信じない」とかマスゴミ理論で、素人優位をいたずらにけしかけるネットのよくある論法よりも本書の具体例は断然に聞く価値がある。

 日ごろから、専門家について不信に思っている人たちは本書を読んでおくべきだろう。

専門家はウソをつく (小学館新書)

専門家はウソをつく (小学館新書)