石橋湛山はレジーム転換後に何を語ったのか?(メモ書き1)

 石橋湛山は1931年、1932年の二段階のレジーム転換後にどんなことを言ったのか。いまの日本経済を考える上でも重要だと思います。1932年11月以降から2・26事件が起きる前までに焦点をあてて、断続的に彼の発言を引用してみます。最初は1932年12月から1月にかけてのもの。マルクス主義的な立場だった有澤廣巳との論争を背景にしたもの。

以下は今日、twitterに書いたものを並べただけのもの。

まず(1)不況がずっと続く期間→(2)不況から好景気に転換する時期→(3)好況期 の三期間にわけて考える必要。(1)において日本の最近の経験だと、実質賃金の高止まり(デフレが主因)によって失業率が増加。ちなみに実質賃金の高止まりはデフレ不況の原因のひとつにしかすぎないことに留意。(2)のいわば過渡期について、石橋湛山が事実上のマルクス主義者といえた有澤廣巳と戦前に論争をしている。『石橋湛山全集』第九巻参照のこと。以下に湛山自身の発言を引用しておく。

石橋湛山「インフレと勤労階級」より。
「1.不景気から好景気に転換する場合には労働者にしてもサラリーメンにしても、個々人の賃金俸給は用意に増加せぬ。だから従来継続して業を持ち、収入を得ている者からは、収入は殖えぬに拘らず物価だけが高くなると観察せられる。二.けれども斯様な時期には、個々人の賃金は殖えずとも、少なくとも就業者は増加する。故に勤労階級全体としては収入が増える、購買力が増す。三.而して斯様に大衆全体の購買力が増えばこそ、其個々人には幸不幸の差はあるが、一般物価(ここで問題の物価は、云うまでもなく生活用品の価格だ)の継起的騰貴も起こる得るのである。」

「私の信じるところでは、インフレに依って起こされようと、何に依って起こされようと、一般物価の騰貴が継続し、所謂景気が好化する折には、勤労階級全体の金銭収入は無論増えるがそれに依って買い得る商品の実量も亦殖える。但し其何れが多く殖えるかと云えば、それは前者であって、後者の殖え方は前者の殖え方よりも少ない。ここには別の問題が起こって来る。がそれにしても彼等の消費し得る商品量は増すのだから、積極的に(マルクス派の有澤がいうように…田中注記)大衆生活を困窮化すると云う事はない」。