西田亮介『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』

 西田さんから頂戴しました。ありがとうございます。ネット選挙解禁を控えて、そもそも「ネット選挙」とは何なのか、その日本における論点をとてもわかりやすく解説しています。

 西田さんはネット選挙を単なる選挙制度の一部修正ではなく、「価値観の転換」としてみています。その問題意識は以下の文章に典型的です。

「ネット選挙の解禁は、日本の選挙制度、より広い意味では日本の政治、日本の民主主義における「価値観の転換」を迫るものが。これまで前提とされてきた「均質な公平性」のもとでの競争から、インターネットの設計思想のひとつである「漸進的改良主義」を政治に取り込むことを暗黙の前提とし、その価値観のもとで選挙制度を再構築するか否かが問われているのだ」。

 いままで公職選挙法放送法などは、「不偏不党」的な公平性に配慮して、日本の民主主義をがんじがらめにしていた側面が強い。それをインターネットの設計思想である、完全じゃないけどやれるところからやればいいじゃんw という発想で対置していく。そこにネット選挙がもつ日本の民主主義の可能性を、西田さんは見ているのかもしれません。

 また本書の後半では、日本の政治家がTwitterなど双方向性のメディアを十分につかいこなしていないことが実証されていて興味深いです。僕の素朴な観察でも、メンションを返したり、RTする人はごく少数です。ただしメンションを返したり、RTしたりする人(特に政策的な発言をする人、政治家にかぎらない)は、不特定多数の人に言葉の正しい意味でからまれるコストが発生しているように思えます。このコストを回避するため、Twitterが単なる一方向の活動報告になってしまいやすいのかもしれません。大衆の反逆コストとでもいいましょうか。

 話がずれましたが、ネット選挙についての日本での包括的な最初の解説書であり、戦略の書、そして若い論客の本格的なデビューであり、それを祝福したいと思います。

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容