常見陽平『僕たちはガンダムのジムである』

 だいぶ前に頂戴しながらtwitterでつぶやいただけでブログに感想を書きませんでした。遅れてすみません。これはもう誰もが認める名著でしょう。社会や会社を支える99%以上のふつうの人たち(=ジム)とは何か、どうしてそうなったのか、何をするべきなのか(してはいけないのか)、これからどうするべきか、などその指針を、『機動戦士ガンダム』をまったく知らなくても十分に理解可能な形で教えてくれるいい書籍です。

 「ぶったね、二度もぶった。オヤジにもぶたれたことがないのに」とアムロがいったことを知らなくても、ふつうの会社員がビシバシ肉体のみならず、どちらかというと精神をぶたれまくっている会社の内実なども統計や実際の体験に裏打ちされたその発言からもよくわかるでしょう。

 教育の現場もジム製造機だし、有名大学をでてTOIEC900点以上とってもジムなのである。しかしジムがいなければどんな優秀な経営者がいても会社は成り立たない。社会も同じである。それにジムが独特の光を放つこともある。その契機は自分の「戦記」を書くことだ。常見さんは社会人こそ自己分析を行い、その「戦記」を眺めて失敗の原因を探究し、またいままでやらされてきた仕事の蓄積を大切にし、そこから成長していくジム道を見出せといっている。

 実際に経済学者だって99%はジムである。僕の研究課題は、二流つまりジム型経済学者の研究が大学院からのテーマであった(昔から僕のことを知っている仲間はみんな知っていることだ)。それはジェイムズ・ミル(J.S.ミルは有名で、いまでも翻訳があるがこちらのミルを知る人は少ない)研究や処女作になった住谷悦治というマイナーな経済学者兼ジャーナリストの研究にもなっている。なぜ僕がこれら経済学者のジムを学び、彼らの「戦記」を学んだのか? 

 自分(=田中)が弱いことをとことん知っていて、自分もまた決してガンダムにはなれないことを自覚しているからだ。そしてジム経済学者として生き残る(つまりは自分の真価を発揮するためにも)戦略を、他のジムたちから学びたかったのである。

 いま書いたのは僕の経験を言いたかったのでは無論ない。本書ではそのようなジム道がまさに記述されていることなのだ。いい本である。

僕たちはガンダムのジムである

僕たちはガンダムのジムである