「日本の国債報道は0.1%の長期金利上昇も許せない」

 異常報道だと思う。たかだか0.1%の上昇でも国債リスクを大喧伝する最近の国債報道の在り方。まさに典型的な国債市場関係者の視野狭隘私感で日本経済を見る見方にしかすぎない。歴史的にまれにみる低金利の続行はデフレ期待の反映であり、昨今の情勢ではデフレ=不況(失業率の高止まりなど)だ。つまり今後、景気がよくなり、物価が上昇すると予想されるならば、当然に長期金利も緩やかに上昇していく。これは自明のことだ。このときには景気がよくなるのだから、失業率は低下し成長率は安定し、また税収も改善していく。このような好循環が訪れれば、当然にプライマリバランス(財政の健全化のひとつの指標)も改善していく。当たり前だが景気回復すればその国の財政指標が改善する。つまりいまの日本の国債報道が、現状の長期金利1%以下の水準での0.1%や0.2%の上昇を、さも国債リスクの増加と報道すること自体が常軌を逸した異常な報道姿勢ーつまり日本はいつまでもデフレの沼に嵌った方がいいという話の裏返しだ。

例えば典型的には以下の記事
国債増発に警戒感も=長期金利3カ月ぶり高水準(時事通信) - Y!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121227-00000158-jij-bus_all

日経平均株価が今年の最高値を更新し、国債を売って株式を買う動きが加速したためだ。市場では株高・円安基調が当面続き金利が緩やかに上昇するとの見方が強いが、安倍内閣の積極財政による国債増発への警戒感もある。

この記事は例えば財政スタンスの拡張姿勢を警戒しているものだ。だが、このような「警戒」のための金利リスクが顕在化しているのではない。つまり記事ではあたかも財政緊縮&消費税増税そしてデフレ維持を願ういまの国債市場関係者(財務省の一部、日銀の天下り先の地方銀行国債のディラー、ストラテジスト、その周辺のマスコミら)のいつまでもこのまま現状の国債価格の「安定」が続くことを願う人たちのマインドの反映に他ならない。

例えば長期金利の動向をもっと長めにみておこう。
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata01.html

例えばここ数年の動向は上のリンク先の二番目にあるが、いかに現在が低い水準での「上昇」だかがわかる。10年間の幅をとるとさらにそれが明瞭だ。さらに10年間のうち、小泉政権が当初の国債発行枠30兆円を放棄し、積極的な金融緩和とそこそこの財政拡張を放置した小泉政権後期から安倍政権の時代では、長期金利が1%台後半から2%台前半まで上昇したことがわかる。

この時期に何が起きただろうか? 国債の格下げや財政危機や銀行の倒産ラッシュだろうか? 違う。上に書いたように、デフレ脱却を安定的に成し遂げる寸前までいき、雇用市場は大幅改善、成長率や税収も安定・改善した。そして国債は格上げ、多くの金融機関もALMをコントロールした。

今回はさらに金融政策のスタンスの変更、その後の物価目標(インフレ目標)の導入などで市場の期待をコントロール国債金利の高騰を防ぐ枠組みと、政府と日本銀行の協調(中長期の財政健全化へのコミット)がはかられるはずだ。そのような政府の方向性を導く議論よりも、あたかも国債関係者の目先の利害や、消費増税ありきの議論にのっているかのような今般の経済記事には大きな違和感と批判を抱かざるをえない。

今後もこのような国債リスクの大喧伝には国民をあげて抗する必要性まで感じる。あまりにひどいからだ。