適菜収『バカを治す』

 「バカ」を治す基本方針ー自分が「バカ」であることを自覚して、自らの発言と行動の特性と限界をよくよく反省すること。ここでいう「反省」はごめんなさい、ではなくもちろん我が身を振り返るという意味。

 これが本書の基本的なメッセージだと思う。

 各論的なところは前著『日本をダメにしたB層の研究』と重なるところがあるが、より丁寧に論点を敷衍した部分、また本書で特に大きく取り上げられているのが女性の問題についてだ。女性を男性と同じ扱いを社会・政治の場ですべきかどうか、また「平等」や「正義」の位置づけはどうなのか、ニーチェなどを援用して適菜さん独自の思索が展開されている。

 本書でもっとも活き活きとした描写は、河合薫氏とのラジオでの顛末とそれに関連した上記の論点を書いた箇所である。適菜・河合論争には、適菜さんの基本的な考えが十分に展開されていると思う。興味深い論著である。

バカを治す (フォレスト2545新書)

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