藪下史郎・和島隆典「Rosscaと社会資本」『効率と公正の経済分析』

 Rosscaというのは「回転貯蓄信用組合」のことで、本論文の定義では、「各期ごとに一定量の財貨(頼母子講の場合には「掛け金」と呼ばれる)が各メンバーから集められ、集められた財貨はすべて(「講金」)が、定められた順番に基づいて一人のメンバーに与えられる制度である。

 完全競争的な資本市場が整備されていないときに、このようなインフォーマルな資金調達の手段が発展する。何を隠そう、僕の祖母は山口県の田舎で行商をしていて、このような講に参加していて、僕の母親はそれから資金調達していたことを思い出す(30年以上前だが)。

 この論文の興味深い論点は、一定の共同体を前提にして、そこでの社会関係資本とこのRosscaの在り方との関連が分析されていることだ。社会関係資本は、貸金が未返済のときの「制裁」にもまた融資先へのさまざまな情報を得ることにも利用される。ここらへんは、有名なところでは、グラミン銀行の事例も思い出すだろう。

 いろいろ論点が拡張できるような面白い論文が収録されている論文集である。

効率と公正の経済分析

効率と公正の経済分析