上念司「経団連よ、この国難に道を踏み外すな」in『正論』9月号

 経団連日本経済団体連合会)の増税パンフレット(「国民生活の安心基盤の確立に向けた提言ー社会保障と税・財政の一体改革」)と、米倉会長の経済・外交観を批判的に論じた上念さんの明快な論説です。

 経団連というかこの種の閉鎖的なギルドは、やはり思考形式も官僚組織・日銀組織と似てしまうのでしょうか。財界と官僚たちの意見の差がまったくみえません。経団連の職員を含めた組織と、例えば経産省あたりを合併させて、両方潰しても、あまり日本経済に影響はないでしょう。しかも増税というのは、官僚組織の非効率性を温存したまま、それでうまいことやっていこう、という発想が根底にあるのはよく知られていることです。つまり増税すればするだけ、予算の裁量は増加するわけですから官僚の既得権は増加する傾向にあります(これは単純な官僚組織の経済インセンティヴからも肯定できるでしょう)。

自由主義経済の守護者であり、かって争議潰しで名を馳せた日経連を吸収した現代の経団連が、日本経済の社会主義化を望んでいるとしたらそれは冗談としか思えない」

 上念さんのストレートな発言には僕も共感を抱きますね。また上記経団連増税パンフレットは、1)人口デフレ論、2)日本破産論のふたつが全面展開されているところも(これまた官僚や日銀の理屈そのものですがw)、合理的な説明に欠けることを上念さんは正しく指摘してます。

 また前から疑問に抱いていた米倉会長の自分の業界の利害を重視する姿勢についても、WSJ日本版などの記事を利用して、上念さんの厳しい批判が展開されています。その背景には経団連的な思考=既得権の維持という官僚的思考、がもろにあるのではないかと思います。

「結局、今の経団連は大企業が寄り集まって競争を忌避し、自らの市場支配体制を維持するための独占企業クラブになっているのではないか?」

 要するに競争を二の次三の次にする前例踏襲的な考え方であり、事態が変化したときには、まず自分たちの業界(経団連全体の利害や日本経済の利害ではない)の既得権の温存から「過激」な発言をするという、まさに官僚的なマインドでしょうね。この種の人たちに、上念さんも指摘していますが、対中国外交など考えられるわけはないと思います。自分たちの身の回りの利害を離れた「国」だとか「社会」とかの観念をもっているかどうか疑わしいですから。

 たぶんこれからも国の官僚と同じペーパーを垂れ流し、たまに目をひく発言は自分の特定業界の利害のみ、という発言が此の組織からは継続するでしょう。それはストレートなほど綺麗な経済インセンティヴによって規制されていると思います。

(追記)
Twitter宮崎岳志議員から興味深い話を聞いたので以下に紹介。
http://twitter.com/#!/MIYAZAKI_Takesh/status/103100375875325952

かつて党の会議で日銀法改正(目的に雇用最大化を追加)を検討したら、経団連の政策担当が「雇用」から勝手に労組を連想し「均衡を欠く」などと反対。「では米FRB社会主義?」と聞いたら無言に。あまり知識なさそう

 しかし面白いんだけど、リフレほどいまの労働環境の改善に効くものはないんだけど、厚労省(その関連団体に天下りしている官僚とか含めて)なんかは、反リフレ的発想をとりやすい。つまり景気対策だとか金融政策なんかは他省庁やほかの組織だけの問題であって、へたにそんなものが効果を発揮すると、自分たちの権益を損ねるとか(上の経団連の政策担当もそんな感じ)思ったり、あるいはそういう景気対策とか金融政策をバカにするか無関心かのいずれかで、自分の身の回りの利害しか考えないのが、まあ官僚(官僚的な、というかほどんど官僚組織の外局ともいえる経団連含む)のやり口でしょうね。どうしようもない連中です。