いい本である。冒頭の三人の先輩たちのそれぞれのアドバイスが本書をひとつの人生の物語としても機能させている。本書のもとは半期の学部学生向けの講義であり、非常にねりこまれた分かりやすい構成になっている。特に第一講のポイントの3つは、いまの学生にとっては、すべての局面で有効ではないだろうか。「1 賢く節約して、運用できる資金を早くつくろう」「2 自分という「人的資本」への投資も有効な運用だと知っておこう」「3 お金の問題は自分の頭で考えよう。他人、特に金融業者を頼ってはいけない」。
特に僕はすべての講義でこの2と3については講義の冒頭で語っている。最も3は金融業者ではなく、「自分の頭で考えよう。他人の意見や答案をみてもろくな結果にならない」という形だけれども。
また「はっきり言おう。男女ともに、カードで買い物をしてリボ払いを使うような経済観念のない相手とは結婚しない方がいい。これは、本気のアドバイスだ」と直言するときは、山崎さんがどのような講義をしているか、その熱い雰囲気も想像できる。
従来のファィナンス関係の講義だとわりと前半にくる分散投資の話は後半までとっておいたり、いわゆる行動ファイナンス系の話題も適宜収録されている。特に他人(要するに金融業者だが)のさまざまな甘言に誘導されてカモにならないことを本書は繰り返し説いている。最終章の個人運用のコツは、お金の運用ではなく、他人の思惑でいきるのではなく自分の判断で好き勝手にいきるためのコツであることが、本書を通読した読者にはわかるだろう。
お金の教室ー二十歳の君に贈る「マネー運用論」 [ 山崎元 ]
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